お天気用語辞典
観測・予報・法律

こちらには、気象観測・気象予報・気象関連の法律に関する用語をまとめました。

おことわり

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重要度 高: 予報士試験必出級の用語。

重要度 中: 予報士試験に出やすい用語。

重要度 低: 気象学常識レベルの用語。

《 50音順 》重要度 … ■:高■:中、□:低
ア行アメダス アンサンブル予報 雲量MOS
鉛直p速度- --
カ行ガイダンス確率予報 カテゴリー予報気象衛星
気象業務法気象予報士 気象レーダー警報
高層気象観測コスト/ロス モデル COSMETS-
サ行災害対策の体制災害予防と応急対策 時系列予報消防法
ショワルター安定指数水防法 数値予報 スレット・スコア
タ・ナ行地上気象観測注意報 天気記号 天気図
特異日ドップラーレーダー ナウキャスト-
ハ行波浪PPM 風向・風速ブライアー・スコア
ブライト・バンド分布予報 平年値防災計画
マ・ヤ行予報予報業務 --
ラ・ワ行ラジオゾンデ観測レーウィン観測 レーウィンゾンデ観測レーダー・アメダス解析雨量図
同義語融雪層 → ブライト・バンド SSI → ショワルター安定指数
大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
観測・予報・法律 五十音順全索引
《 ア行 》

アメダス

基本的に地上気象観測にあたる、 気象庁の地域気象観測システム(Automated Meteorological Data Acquisition System)の略称。
全国約1300ヶ所の観測所で降水量を測定し、そのうち約840ヶ所の観測所で風向・風速、気温、日照も観測しています。 設置地点の間隔は、降水量の測定地点で平均17km、風向・風速、気温、日照も含む観測地点では平均21kmです。 また、豪雪地帯を中心とした約200ヶ所の観測所では積雪深も観測しています。
観測は自動的に行われ、毎時ごとに電話回線を通じて、全国のアメダス観測データが東京の地域気象観測センターに集められます。 そこでCOSMETS(気象資料総合処理システム)によって解析処理され、各地の気象官署や放送局等に配信されます。
また、10分毎の観測値が基準値を上まわった場合のデータは臨時送信されます。

アンサンブル予報

解析値に含まれる誤差程度の微小な違いのある複数の初期値をもとに、予報を行う方法。
アンサンブル予報の長所は、第1に、複数の予報があるので、気温や降水量の高い(多い)・平年並み・低い(少ない)階級が出現する 確率を見積もることができることです。第2に、個々の予報を平均したアンサンブル平均による予報成績は、 個々の予報の予報成績の平均より統計的に見てよいことです。第3に、予報全体のばらつきが小さい時に、 予報の信頼性が高いと判断できることです。
中・長期予報に使える為、当面これらの予報精度が向上されると期待されており、 気象庁では、1996年3月からアンサンブル予報による1ヶ月予報を業務化しています。

雲量

全天空(観測点から見ることが出来る空全体)に占める雲に覆われている部分の割合のこと。
現在気象庁では、全雲量は0から10の整数、及び、雲はあるがその量が1に満たない場合は0+、 雲量が10であっても隙間のある場合は10-とする13段階で観測しています。

MOS

数値予報モデルの予測結果を天気に翻訳する手法の一つ。
MOSは、Model Output Statisticsの略で、「数値予報モデルの出力データの統計処理」の意。
過去の数値予報モデルの予測値とそれに対応する天気要素の統計的関係式を用いて、 数値予報モデルの予測結果から特定の地域や地点の天気要素を求める手法です。
よく似た手法にPPMがありますが、MOSの方が数値予報の系統的な誤差が自動的に修復されるという利点があり、 一般的にMOSによる天気翻訳の方が精度が高いです。
現在、主として使われているガイダンスは、MOS手法によって作成されたものです。

鉛直p速度

大気の鉛直方向の流れ(上昇・下降気流)による気圧変化の速度のこと。
通常、hPa/h という単位で表され、+(正)の場合は時間毎に気圧が上昇する、すなわち下降気流を、 -(負)の場合は時間毎に気圧が下降する、すなわち上昇気流を示しています。
高層天気図の1つである850hPa 気温・風, 700hPa 上昇流解析図において、鉛直p速度が用いられています。

《 カ行 》

ガイダンス

数値予報のデータを代入して短時間で気象予報を行う目的で、過去の統計に基づいて作成された関係式のこと。
数値予報の重要性が増すに従って、その出力データは膨大なものとなり、予想天気図も多種多様なものとなってきています。
同時に気象予報の即時性は益々求められており、数多くのデータを基に短時間で的確な予報を行うには、 その度毎に複雑な解析を行うことが困難となっており、そこで登場した手法がガイダンスです。
現在、主として使われているガイダンスは、MOS手法によって作成されたものです。
他でよく似た手法にPPMがあります。

確率予報

確率で表現された気象予報のこと。
現在、気象庁が発表している確率予報は、6時間毎の予報対象時間内に1mm以上の降水が発生する確率、いわゆる降水確率です。
降水確率は0〜100%まで、10%刻みの11段階で発表されています。
降水確率はあくまで雨が降るかどうかの確率であり、降水量や連続して降るか、俄雨か等についての情報はもっていません。 よって、確率が高いからと言って雨がたくさん降る等ということでは決してありません。
この確率予報を合理的に利用する為の手段として、コスト/ロス モデルという考え方があります。
また、確率予報の精度の評価指数として、ブライアー・スコア等があります。

カテゴリー予報

天気や気温の予報で、現象(晴・曇・雨等)や階級(平年以下・平年並・平年以上等)に分けて表現する予報。
普段テレビでよく見る「お天気マーク」で表現された予報です。
雨が降るかどうかもカテゴリー予報の1つです。
分かりやすい反面、ちょっとでも予報と違うと、はずれたと見なされてしまいます。
その為、降水確率予報に代表される確率予報とあわせて見た方がいいでしょう。
カテゴリー予報の精度の評価では、分割表による方法が最も基本的なものです。
表中の数値から、適中率、見逃し率、空振り率、スレット・スコア等の指数を算出することで評価を行います。

気象衛星

宇宙から観測する気象観測の方法の1つで、その為に使われるのが気象衛星(人工衛星)です。
気象衛星観測では、太陽光の反射による可視画像と、 大気中の雲や地球表面からの赤外線放射 (地球放射)による画像データ(赤外画像)を得ることができます。
可視画像と赤外画像について、詳しくは気象予報士試験の傾向と対策 実技試験をご覧下さい。
赤道上空で円軌道を描いている気象衛星は、高度を約36,000kmに設定すると自転周期が地球の自転と同じになる為、 地球上からは上空に静止しているように見えます。
これを静止衛星といい、日本が打ち上げた気象衛星「ひまわり」もこの1つです。
とは言っても、現在、気象庁は「ひまわり」を使用していません。
この事について、詳しくは気象関連最新情報をご覧下さい。

気象業務法

気象業務に関する基本的制度を定めることによって、気象業務の健全な発達を図り、 以って災害の予防、交通安全の確保、産業の興隆等公共の福祉の増進に寄与するとともに、 気象業務に関する国際的協力を行うことを目的とした法律のこと。
観測、予報・警報、気象予報士、規則、罰則等に関する規程があります。

気象予報士

気象予報士は、気象業務法で定められた国家資格であり、予報業務許可事業者において、 特に気象等の現象の予想に関わる業務を行う技術者を対象とした国家資格です。
現象の予想は、気象予報士のみが実施できる業務です。
資格を得るには、気象予報士の資格試験に合格し、気象庁長官の登録を受ける必要があります。
気象業務法で定められた欠格事項に該当しない限り、一生資格が消えることはありません。
気象予報士試験については、こちらの気象関連最新情報をご覧下さい。

気象レーダー

電磁波(レーダービーム)を発射して、その反射波(エコー)によって目標の存在を探知し、位置を測定する装置のこと。
レーダー(RADAR)は、RAdio Detection And Rangingの略です。
気象観測において、目視や天気図では把握しにくいメソスケール現象の観測に適しており、 主に大気中の降水粒子の分布状況の観測に利用されています。
気象レーダーによる観測は、広い範囲の降水現象を瞬時に連続して観測できるという非常に大きな利点がありますが、 目標に至るまでのレーダービームとエコーの減衰、地形の影響、ブライト・バンドの過大なエコーや、 ビームの空間的広がり等によって誤差が生じます。
その為、アメダスの測定値を参照した上でレーダー・アメダス解析雨量図が作成されています。

警報

予想される現象によって、重大な災害の起こる恐れのある旨を警告して行う予報を警報と言います。
警報には、主に以下の6種類があります。

気象警報暴風雨、暴風雪、大雨、大雪等に関する警報。
地面現象警報大雨、大雪等による山崩れ、地滑り等の地面現象に関する警報。
津波警報津波に関する警報。
高潮警報台風等による海面の異常上昇に関する警報。
波浪警報風浪、うねり等に関する警報。
洪水警報洪水に関する警報。

テレビでよく見る警報は、防災気象情報として、 各都道府県の地方気象台や指定地区測候所が定める基準に達することが予想された場合に発表されるものです。
警報には、上記の一般向けの気象・高潮・波浪・洪水警報の4つがあり、 この内気象については、大雨・大雪・暴風・暴風雪警報があります。

高層気象観測

大気上空の気象観測のこと。
基本的な方法には、ラジオゾンデレーウィンレーウィンゾンデがあります。
これら気球による観測では高度約30kmが限度の為、高度約30〜60kmまでの高層については、 気象ロケットによる気温・気圧・風向・風速の観測を週1回行っています。
岩手県三陸町綾里の気象ロケット観測所では、気象ロケットを打ち上げ、 約60kmの高さからパラシュートにつけた気象観測器を落とし、地上までの気温・気圧・風向・風速等を観測しています。
高層気象観測によって得られたデータは、高層天気図や数値予報、鉛直断面図、エマグラム等に利用されています。

コスト/ロス モデル

気象予報の様な、誤差を伴う(100%適中する訳ではない)情報を合理的に利用する為の手段のこと。
コストは対策に要する費用、ロスは対策によって軽減できる損害を意味しており、 コストとロスの比が、損害を伴う情報の発生確率(小数)より小さければ対策を講じる、 大きければ対策を講じないというものです。

例えば、コスト/ロス比が1以上の場合、損害以上の対策費がかかるということなので、無条件で対策を講じないことになります。
逆にコスト/ロス比が0に近い場合、数十年に一度の災害時の避難等、ちょっとした対策で損害が軽減できるということなので、 発生確率がかなり低くても対策を講じることになります。

右下の図は、コスト/ロス モデルを適用した場合に得られる利益について、 確率予報カテゴリー予報と 完全予報(100%適中する予報)の比較をしたものです。
特に、コスト/ロス比が大きい時と小さい時に、確率予報の利益がカテゴリー予報の利益を大きく上回っています。
中でも、コスト/ロス比がかなり大きい場合、確率予報では利益がほぼ0であるのに対し、 カテゴリー予報では利益がマイナスになっています。(対策を講じることでかえって損をする)
気象予報を利用する経済産業活動において、コスト/ロス モデルを適用して合理的な対処を行うことが重要となります。
その場合、気象予報はその発生確率を伴う確率予報である必要があるのです。

みなみが隣の島に出掛ける場合の例
朝、みなみは自家用船で隣の島に出掛け、夕方帰る予定。
但し、午後海が荒れると自家用船では帰れない。
みなみの島と隣の島は定期船が往復しており、海が荒れても定期船なら行き来できる。
ここで、コストは定期船の往復運賃\1,000、ロスは定期船の往復運賃\1,000と自家用船の停泊費\1,000とすると、 コスト/ロス比は0.5となる。
午後海が荒れる確率が30%の場合、0.3 < 0.5とコスト/ロス比の方が大きいので対策を講じない、つまり、自家用船で行く。
午後海が荒れる確率が80%の場合、0.8 > 0.5とコスト/ロス比の方が小さいので対策を講じる、つまり、定期船で行く。
予報への対策と利益

COSMETS

気象庁の中枢コンピュータシステムである、気象資料総合処理システムのこと。
COSMETS(コスメッツ)は、Computer System for Meteorological Services の略称です。
各種観測資料の入出力、及び、整理・統計を行う全国中枢気象資料自動編集中継装置(C-ADES:シー・アデス)と、 各種解析・予報図の作成を行う数値解析予報システム(NAPS:ナップス)から構成されています。
全国のアメダス観測データはここで解析処理されています。
詳細については、アメダスをご覧下さい。

《 サ行 》

災害対策の体制

国、地方自治体、指定行政・公共機関に分けられた災害対策の枠組みのこと。
まず国においては、内閣総理大臣を会長とする中央防災会議が内閣府に置かれています。 中央防災会議は、防災基本計画や非常災害時の緊急措置計画の作成・実施の推進、 関係行政機関に対する協力要請、地方防災会議に対する勧告・指示を行います。
内閣総理大臣が指定する行政機関(消防、警察等)は、防災業務計画の作成・実施、 地域防災計画の作成・実施が円滑に行われる為の地方自治体に対する勧告・指示等を行います。 緊急災害が発生した場合においては、災害の規模等から必要な場合には、内閣府に非常災害対策本部が置かれ、 各機関が実施する災害応急対策の総合調整と、非常災害に際して作成される緊急措置計画の実施等を行います。 更に、災害が特に異常、激甚で災害緊急事態が布告された場合は、緊急災害対策本部が設置されます。
地方自治体においては、首長(知事、市長等)を会長とする地方防災会議が内閣府に置かれています。 地方防災会議は、地域防災計画や非常災害時の緊急措置計画の作成・実施の推進、 災害応急対策や災害復旧に関する各機関の連絡調整等を行います。 都道府県や市町村地域で災害が発生、またはその恐れがある場合において、 防災の推進に必要な時は災害対策本部が置かれ、地方防災会議との連携のもとに、災害予防、災害応急対策を行います。
公共事業を営む法人で内閣総理大臣が指定する公共機関(NTT、日赤、NHK等)として、防災業務計画の作成・実施、 防災計画の作成・実施が円滑に行われるよう都道府県に協力します。

災害予防と応急対策

災害予防とは、災害の発生を未然に防止する為に、防災に関する組織の整備、 訓練、物資の備蓄・整備・点検等を行うことです。
災害応急対策とは、災害が発生またはその恐れがある時に、災害の発生または災害の拡大を防止する為に、 警報の発令・伝達、避難勧告・指示、消防・水防の応急措置、被災者の救難・救助、施設・設備の応急復旧等を行うことです。

指定行政機関や地方公共団体等は、法令、および防災計画に基づいてこれらの災害予防や災害応急対策を行います。
また災害発生時には、現地に最も近い市町村長が、第1次的な責任者として災害応急活動を実施する必要があります。 その為、市町村長には、人命保護の為の立退き勧告・指示、消防機関等に対する出動命令、災害の拡大防止の為の設備の除去等の指示、 といった応急対策上の広範な権限が付与されています。

時系列予報

24時間先までの3時間毎の天気・気温を予測する短時間予報のこと。
これにより、ある地点での1日の天気の変化を知ることができます。
この予報は、各種ガイダンスに基づいて作成されます。

消防法

火災を予防・警戒、及び鎮圧して、国民の生命、身体及び財産を保護することを目的とした法律のこと。
火災を予防・警戒する為、気象庁長官等は、気象の状況が火災の予防上危険であると認める時は、 その状況を直ちにその地を管轄する都道府県知事に通報しなければなりません。
この通報を受けた市町村長は、これに基づき、或いは自ら気象の状況が火災の予防上危険であると認める時は、火災警報を行うことができます。
火災警報が発せられた時は、その区域内では火気の使用等が制限されます。

ショワルター安定指数(SSI)

大気の鉛直安定度を表す指数の1つ。
SSIは、Showalter's Stability Indexの略です。
SSIは、850hPaの空気塊を断熱的に上昇(最初は乾燥断熱的に、 凝結高度に達した後は湿潤断熱的に上昇)させて、 500hPaに達した時点での周りの空気の温度との差を1℃単位で表したものです。
500hPaまで上昇させた空気塊が周りの温度より高い場合、空気塊は更に浮力を得て、 上昇気流として対流雲を発達させることになります。
従って、SSIが−(温度が周囲より高い場合)である時には、大気が不安定で雷雨等が発生しやすく、 逆にSSIが+(温度が周囲より低い場合)である時には、大気が安定であることになります。
実際には、SSIが−(マイナス)の時は雷雨発生の可能性があり、-3以下になるとかなりその危険性が高くなります。

水防法

洪水又は高潮に際して公共の安全を保持することを目的とした法律のこと。
気象庁長官は、気象等の状況により、洪水・高潮の恐れがあると認める時は、 その状況を国土交通大臣、関係都道府県知事に通知するとともに、報道機関の協力により、一般に周知させます。
このことは気象業務法において、水防活動の利用に適合する予報・警報として規定されていて、 大雨、高潮、洪水注意報・警報として行われます。
また、2つ以上の都府県にわたる河川で、洪水で重大な損害が生ずる恐れがあるものについては、 気象庁長官と国土交通大臣が共同して洪水の恐れがあると認めるときは、 その状況を関係都道府県知事に通知するとともに、報道機関の協力により、一般に周知させます。
国土交通大臣および関係都道府県知事は、洪水・高潮によって災害の起こる恐れがある場合には、 水防警報を行わなければなりません。

数値予報

大気運動を支配する物理的法則を観測値に適用して、計算によってその将来的な数値を導き出して行う予報のこと。 物理的法則とは、流体力学、熱力学、質量保存則等の多くの方程式で、現在の天気予報の基礎になっている技術です。
数値予報は、まず気象観測データの品質管理と客観解析を行って初期値を作成し、 次に大気の数値モデルを用いた時間的数値積分処理を行います。
それによって得られた出力を、ガイダンス等によって天気に翻訳します。

数値予報では、物理的方程式をあてはめる為に、大気の状態を一様化・理想化して考えることが基本となります。
勿論、広範囲の連続体である大気の状態を全て一様に捉えて計算しても意味はありませんが、 ある限られた立体的な範囲内の大気については、計算による予測はかなり有効性をもちます。
つまり、大気を細かく切断して、それぞれの気象条件毎に計算した後、それらを組み合わせるという方法が成り立つ訳です。
従って、大気空間中に3次元的な立体の格子を作り、その格子点それぞれの気温・気圧等の気象要素の観測値を初期値としてコンピュータ解析し、 その予測値を格子点毎に算出していく方法が数値予報という訳です。

数値予報の中核となるのは、大気の数値モデルです。
これは、大気を格子状に切断して、各格子点の気象状態を数値で表したものです。
現在、気象庁で用いている数値予報モデルを下表に示します。
(台風モデルは、台風襲来時のみ使用)

数値予報モデル解像度(水平×鉛直)予報期間目的
力学的1ヶ月
予報モデル
180km×30層35日・週2回(各5例)長期予報(1ヶ月)
全球モデル55m×30層84時間・192時間週間天気予報・台風進路予報
領域モデル20km×36層51時間短期天気予報
台風モデル40km×15層78時間台風進路予報

スレット・スコア

ある現象の発生について、予報、実況ともに「発生なし」であった場合を除外した適中率のことで、 カテゴリー予報の精度の評価指数の1つ。
これは、稀な現象の予報の精度の評価に有効なもので、例えば竜巻のような現象では、 予報、実況ともに「発生なし」で適中したとしても技術的にも実効的にも意味がない為、除外して考える訳です。
よって、スレット・スコアは、警報の精度の評価によく用いられています。

《 タ行 》

地上気象観測

地上において気象測器や目視によって行う気象観測のこと。
大気の状態は、気圧、温度、風向・風速、降水量、水蒸気量等様々な気象要素によって表されますが、 それらの大部分は地上気象観測によって得られます。
その観測には、主に以下の様な気象測器が用いられます。(水蒸気量は、水蒸気圧や露点温度で表される。)

気圧水銀気圧計、または振動式気圧計
気温白金抵抗を通風筒に入れた隔測温度計
風向・風速風車型風向風速計
降水量転倒ます型雨量計
水蒸気量塩化リチウム露点温度計、または通風型乾湿計
日照時間回転式日照計、またはジョルダン式日照計
日射量自記直達日射計、および熱電堆式全天日射計

この他に、目視によって観測される気象要素もいくつかあります。
雲は、雲形、雲量、高さについて目視によって観測されます。
大気現象は、降水や霜等の水に関係した現象、煙霧など固体粒子の浮遊による現象、 雷など光や電気に関係した現象が観測されます。
尚、視程(前方視界の距離)は通常目視で観測されますが、一部では前方散乱方式の視程計を用いています。

世界気象機関(WMO)の基準では、天気予報の為の地上気象観測点は150km以下の間隔で配置されることが望ましいとしています。
日本では、155の気象官署が3時間毎の観測を実施しており、この基準を十分に満たしていますが、 この基準は大規模現象の予報を目標としたもので、メソスケール現象の予報には粗過ぎるといえます。
その為アメダスが運用されていますが、このシステムも基本的には地上気象観測にあたります。

注意報

予想される現象によって、警報を発表する程度に至らない、 軽度の災害の起こる旨を注意して行う予報を注意報と言います。
注意報には、主に以下の6種類があります。

気象注意報風雨、風雪、強風、大雨、大雪等によって災害が起こる恐れがある場合に、その旨を注意して行う予報。
地面現象注意報大雨、大雪等による山崩れ、地滑り等によって災害が起こる恐れがある場合に、その旨を注意して行う予報。
津波注意報津波の有無、程度について一般の注意を喚起する為に行う予報。
高潮注意報台風等による海面の異常上昇の有無、程度について一般の注意を喚起する為に行う予報。
波浪注意報風浪、うねり等によって災害が起こる恐れがある場合に、その旨を注意して行う予報。
洪水注意報洪水によって災害が起こる恐れがある場合に、その旨を注意して行う予報。

テレビでよく見る注意報は、防災気象情報として、 各都道府県の地方気象台や指定地区測候所が定める基準に達することが予想された場合に発表されるものです。
注意報には、上記の一般向けの気象・高潮・波浪・洪水注意報の4つがあり、 この内気象については、大雨・大雪・強風・風雪・濃霧・雷・乾燥・雪崩・着雪(氷)・霜・低温注意報があります。

天気記号

天気図(特に地上天気図)の中に、その場所の天気を記入する時に用いる記号のこと。
天気記号の形式には、日本式と国際式があります。
天気記号の詳細については、気象予報士試験の傾向と対策 実技試験のススメをご覧下さい。

天気図

ある時刻の天気(大気)の状態を示したもので、 観測によって得られたデータを一定の記号と形式によって表した図です。
観測点の位置や主な表示内容によって、地上天気図や高層天気図、実況図や予想図等いくつもの種類があります。
天気図の詳細については、気象予報士試験の傾向と対策 実技試験をご覧下さい。

特異日

科学的根拠は無いが、統計的に特に決まった天気になるとこが多い日のこと。
例えば、11月3日は晴れとなることが多い。(東京)

ドップラーレーダー

移動している物体が発する(又は反射する)電波や音波の周波数は、 その速度によって異なるというドップラー効果を利用したレーダーのこと。
目標物からの反射波と、元の送信波との周波数の差によって、目標物の移動速度を観測します。
気象ドップラーレーダーでは、大気中の降水粒子からの反射波の周波数を解析することにより、 その移動速度つまり風速を観測しています。
特に空港においては、風の動向が航空機の離着陸に大きな影響を及ぼす為(突風、乱気流、ダウンバースト等)、 国際空港等一部の空港では、空港気象ドップラーレーダーを設置して、 風向・風速の局地的な現象を瞬時に把握できるようにしています。

《 ナ行 》

ナウキャスト

詳細な天気実況データを基本に1〜3時間先程度までを予測する短時間予報のこと。
主として初期時刻の詳細な実況(レーダー・アメダス解析雨量図)の外挿、 つまり、基本として降雨域の過去の移動をそのまま当てはめた手法です。
この場合、先行時間が短い程その精度は高くなります。

《 ハ行 》

波浪

いわゆる波のこと。
波浪には、風浪(その海域の風によって引き起こされたもの)と うねり(遠方で発生した風波が伝播してきたもの)の2種類があり、 海上気象観測では、それぞれ波向、周期、波高の3要素を目視、及び計器で観測しています。
波浪予報や波浪注意報、警報で使われる波の高さ(波高)には、有義波高を用います。
これは、観測した波を高さの順に並べ、高い方から1/3の個数の波の平均をとったものに相当します。 海面を観察して、直感的に感ずる平均的な波高は、この有義波高に近いと言われています。

PPM

数値予報モデルの予測結果を天気に翻訳する手法の一つ。
PPMは、Perfect Progno Methodの略で、「完全予報の手法」の意。
過去の実況値(または数値予報の初期値)とそれに対応する天気要素の統計的関係式を用いて、 数値予報モデルの予測結果から特定の地域や地点の天気要素を求める手法です。
よく似た手法にMOSがあります。以前はPPMが主流で、数値モデルが更新される際、 すぐに対応できる(MOSは少なくとも1〜2年のデータ蓄積が必要)という利点がありますが、 MOSによる天気翻訳の方が精度が高く、現在はMOSが主流となっています。

風向・風速

風を観測することで得られるデータのこと。
風向(風が吹いてくる方向)は16方位、または36方位で表されます。
風速はKT(ノット)という単位で表されます(1 m/s ≒ 1.94 KT)。
天気図では風は矢羽根で表され、矢羽根の向きが風向、 短矢羽根が5KT、長矢羽根が10KT、旗矢羽根が50KTの風速を表しています。
平均風向・風速は、一定時間内の風向・風速を平均した値で、 気象庁の地上気象観測では、観測時刻前10分間の平均値を用いています。
瞬間風速(平均風速の約1.5〜2倍にもなる)は、0.25秒毎に観測されます。

ブライアー・スコア

確率予報の精度の評価指数の1つ。
ブライアー・スコアは、降水確率予報値(例えば100%を1.0とした値)に対して、実況での降水なしを0、降水ありを1として、 両者の差(予報誤差)の2乗の平均として求められます。
要するに、降水確率予報値が0.1で実況では降水がなかった場合は、

(0.1-0)2 = 0.01

これが予報誤差の2乗の値で、全データにおける平均値がブライアー・スコアとなる訳です。
ブライアー・スコアは、その値が小さいほど予報の精度が高いと言えます。

ブライト・バンド(融雪層)

冷たい雲の中で、落下する雪が融けて雨に変わる高さの大気の層。
レーダービームのエコーが強く、気象レーダー観測における誤差原因の1つとなっています。

分布予報

24時間先までを、3時間毎の天気・降水量・気温をおよそ20kmメッシュ毎に分布図の形で予測する短時間予報のこと。
これにより、集中豪雨等のメソスケール現象についても予想が可能になっています。
この予報は、各種ガイダンスに基づいて作成されます。

平年値

過去30年間の平均値のこと。
テレビ等の天気予報でよく聞く「明日の気温は平年並みでしょう。」の平年は、この平年値のことです。
平年値は10年毎に最も新しい30年間のデータによって更新されています。

防災計画

災害対策基本法を基に各機関が作成する防災に関する計画のこと。
防災計画には、以下の3種類があります。

名称作成機関解説
防災基本計画中央防災会議 防災に関する基本的な計画。
防災業務計画、地域防災計画の作成基準となる。
防災業務計画指定行政機関
指定公共機関
それぞれの機関の業務について作成する防災に関する計画。
地域防災計画地方公共団体 地域の防災に関する自治体や行政機関・公共機関の業務、災害応急対策および災害復旧に関する計画等。
《 ヤ行 》

予報

気象・地象(地震・火山現象を除く)・水象の観測の成果に基づいて気象等の現象を予想し、発表することを予報と言います。
この場合の予想とは、自然科学的方法で行われるものをいい、 発表とは、予想結果を公衆が知り得るような状態にしておくことを意味します。
予報は、定期的または必要に応じて随時行われます。
予報には、主に以下の4種類があります。

天気予報(短期予報)当日から3日以内における風、天気、気温等の予報。
週間天気予報(中期予報)当日から7日間の天気、気温等の予報。
季節予報(長期予報)当日から1ヶ月間、当日から3ヶ月間、暖候期、寒候期、梅雨期等の天気、気温、降水量、日照時間等の概括的な予報。
波浪予報当日から3日以内における風浪、うねり等の予報。

予報業務

予報を反復・継続して行うこと(有償・無償問わず)。
自然科学的根拠のない予想(占い、噂、特異日等)を発表することは予報とは言えず、 またテレビ番組等で気象庁の予報を天気図等とともに解説することも予報業務には当りません。
気象庁以外の者が予報業務を行おうとする場合、気象庁長官の許可を得なけらばなりません。
その際には、行おうとする予報の目的と範囲に、必要な施設や要員を有していなければなりません。
更に、予報業務を行う事業所毎に気象予報士を配置していなければなりません(気象業務法より)。

《 ラ行 》

ラジオゾンデ観測

高層気象観測の基本的な方法の1つ。
風向気圧計、サーミスタ温度計、カーボン湿度計または静電容量変化型湿度計を気球に吊り下げて飛揚させ、 地上約30kmまでの気圧、気温、湿度を測定します。測定結果は無線で地上に送られて記録されます。
日本では、3時と15時に全国18ヶ所の観測所、及び4隻の海洋気象観測船で観測を行っています。

レーウィン観測

高層気象観測の基本的な方法の1つ。
無線送信機を気球に吊り下げて飛揚させ、1分毎に位置を探知して、地上約30kmまでの風向、風速を計算測定します。
日本では、これのみの観測は行っていません。

レーウィンゾンデ観測

高層気象観測の基本的な方法の1つ。
ラジオゾンデ観測レーウィン観測を同じ気球で行うものです。
日本では、9時と21時に全国18ヶ所の観測所、及び4隻の海洋気象観測船で観測を行っています。

レーダー・アメダス解析雨量図

気象レーダーの観測値をアメダス雨量計による測定値と比較して、 誤差を補正し作成されたのが、レーダー・アメダス解析雨量図です。
これにより、アメダスのみでは捕捉できなかった局所的な集中豪雨もとらえることができるようになっています。

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