気象予報士試験の傾向と対策
学科専門試験のススメ

ようこそいらっしゃいました!
こちらでは、実際の学科試験『予報業務に関する専門知識』の形式でまとめました。
気象予報士試験の勉強にお役立て下さい。

おことわり

このページは、2010年11月25日以降、記事内容の更新がされておりません。
現在の情報とは異なる部分が存在する可能性がありますので、大変申し訳御座いませんが、その旨ご理解の上でご覧頂ければ幸いです。

おことわり

このページでは、閲覧以外のいかなる目的の使用も禁止とさせて頂きます。
尚、このページに掲載されている例題、添付図表は、実際に気象予報士試験で出題されたものを参考にして作成しております。

試験の心得 (残り時間:--分)

学科試験 予報業務に関する専門知識は、原則として5つの選択肢から1つを選択する多岐選択式です。(マークシート形式)

試験は11:05〜12:0560分間となっています。
問題は全部で15問が出題されます。

単純に計算して1問につき4分なので、時間的にはちょうどいい位かと思います。
難易度はそんなに高くはありません。

さて、学科一般試験が終わり、受験者には20分のインターバルが与えられます。
あなたはこの時間をどのように使いますか?

学科専門試験の直前チェックをしたり、ちょっと一服したり、試験会場を散策したり、 勿論あなたの自由ですが、実際自由な時間は10分程度なので、私はちょっと一服することをオススメします。
直前チェックもいいですが、あまり時間がないので、ほとんど意味がないと思います。

とにかく、前の試験の事は忘れ、頭をリフレッシュさせましょう。

始める前に (残り時間:--分)

試験の前に、まず必要な物を机の上に揃えましょう。

試験要項に書いてある持ち込み可能な道具を見てみると、
受験票、HBの鉛筆(又はシャープペンシル)、プラスチック製消しゴム、色鉛筆、マーカーペン、定規、 デバイダー(分度器、又はコンパス)、ルーペ、ペーパークリップ、時計(計算機機能の付いていないもの)とあります。

この内、学科試験で必要な物は、受験票、HBの鉛筆(又はシャープペンシル)、プラスチック製消しゴム、時計だけです。
その他諸々は、実技試験で使う物なので、学科試験で机上に用意する必要はありません。

さて、問題用紙が配られたら、まず注意事項に目を通しましょう。
分かりきった内容ですが、試験開始までインターバルがあるので、気分を落ち着かせるのに使いましょう。

勿論、解答用紙に受験番号と氏名を書くのを忘れずに。
間違えると無効になっちゃうので、何度も確かめましょう。

全て準備が整えば、後は試験開始の合図を待つのみです。

試験開始 (残り時間:60分)

さあ、試験官の合図で学科専門試験が始まりました。

全体をさらっと見渡して、簡単な問題から解答していってもいいですが、 この方法だと多少時間をロスしてしまうので、1問目から順番に解いていっていいと思います。
それで、ちょっと時間をかけたい問題にぶつかった場合は、その問題を後回しにしていきましょう。

わかる問題は確実に正解しておくことが必要です。

わかる問題を解答し終わったら、残りの問題にとりかかりましょう。

時間をかけて考えても分からなかったら、とりあえず消去法で選択肢を絞り込みましょう。
最終的に1つに絞り込めなくても、あてずっぽうでも全て答えを書き込みましょう。

多岐選択式なので、あてずっぽうでも正解となる確率が最低20%はあります。(0%よりかはマシです)
絞り込めば絞り込むほど、正解となる確率が上がります。

観測の成果の利用 (残り時間:60分)

だいたい3問が出題されます。
各種地上気象観測の内容、通報される観測データの内容と、高層気象観測の内容、通報される観測データの内容と、 レーダー気象観測の原理と内容、グランドクラッター等利用上の注意と、衛星観測の内容、赤外画像と可視画像の特性が主な内容となります。

特に最近の傾向として、第1問で地上気象観測に関する問題が出題されています。
出題される問題としては、各気象観測に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。

題材としては、数が多いので割愛しますが、とにかく色々な観測方法が取り上げられています。
けっこう細かい内容を問われますので、全てを暗記する必要はありませんが、完全に理解しておくことが必要です。
以下に例題を示します。

【例題 1】(平成14年度第2回試験 問1 類似問題) 難易度:★★★★☆
地上気象観測について述べた次の文章(1)〜(5)のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 平均風向・風速は、一定時間内の風向・風速を平均した値で、気象庁の地上気象観測では、観測時刻前10分間の平均値を用いている。
(2) 降水量を正確に測定する為、雨量計はできるだけ気流が水平で局所的な乱れの少ない場所を選んで設置するのが望ましい。
(3) 現地気圧を海面更正するにあたって、気象庁の地上気象観測では、観測地点から平均海面までの気温、湿度は、 観測地点の値に等しいと仮定している。
(4) 気象庁では、全雲量は、全天空に占める雲に覆われた部分の割合を0から10の整数、及び、 雲はあるがその量が1に満たない場合は0+、雲量が10であっても隙間のある場合は10-とする13段階で観測している。
(5) 地表付近では気温は高さと共に大きく変化するので、気象庁では、温度計は地上1.5mの高さに設置することを基準とし、 多雪地では雪面上1.5mの高さを維持することとしている。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 観測地点の値に等しいではなく、観測地点から平均海面までの平均値。

【解説】
気圧の海面補正の仕方を知っていれば、誤りだと気付くことができるでしょう。
海面補正をするにあたり、温度と湿度は必須のパラメータですが、 当然、標高が違うと気温も違ってきますし、湿度によって気温減率も変わってきます。
その為、観測地点から平均海面までの平均気温を使って、海面補正を行います。
けっこう過去に出題された文章が使い回されているようなので、過去の問題をチェックしておくことをオススメします。


【例題 2】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
各気象観測について述べた次の文章(a)〜(e)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) アメダスの観測要素は、降水量、気温、風向・風速、日照時間、及び気圧である。
(b) レーウィン観測は、気圧計と無線送信機を自由気球につけて大気中を上昇させ、 上空約30kmまでの気圧、気温、湿度、風向、風速を観測する。
(c) 降水粒子のように、空間にほぼ一様に分布している目標から受信される電波の強さは、目標までの距離の4乗に反比例する。
(d) 降水粒子がレーダーから遠ざかるように動いている時には、反射した電波の周波数は送信周波数よりも低くなる。 ドップラーレーダーでは、この様な周波数の変化から動径方向の風速を測定している。
(e) 帯状の雲域の中や南側で、「にんじん」の形をした雲域ができることがあるが、その先端は活発な対流雲域で、 豪雨等激しい気象現象を伴っている。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)と(c)が誤り
(3) (d)と(e)が正しい
(4) (b)と(d)が誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) (a):気圧は観測していない。 (b):気圧、気温、湿度は観測していない。 (c):4乗ではなく、2乗。

【解説】
各気象観測について理解していれば解けると思われますが、中には(c)や(d)のような理論的な内容も出題されるので、 この様な内容、表現に慣れておく必要があるでしょう。
地上気象観測、高層気象観測、アメダス、気象衛星観測については暗記するだけでいいですが、 気象レーダー、ドップラーレーダーについては理論的な内容が多いので、しっかり理解しておくことが必要です。

数値予報 (残り時間:48分)

現在、一番重要視されているジャンルで、だいたい3〜4問が出題されます。
各種気象現象のスケールと寿命、予測可能性と、数値予報の原理、数値予報モデルの概要、データ同化等と、 各種プロダクト(結果)の内容、プロダクト利用上の注意が主な内容となります。

出題される問題としては、数値予報モデル・プロダクトに関する記述の正誤を問う問題解析予報サイクルに関する問題がほとんどです。
違ったケースとしては、大気中のさまざまな擾乱に関する記述の正誤を問う問題がありました。

数値予報は、特に理系的な内容なので、かなり理解することは難しいかもしれませんが、 でも、完全に理解して下さい。(学科専門試験で一番難易度の高いジャンルと言えます。)

解析予報サイクルは、けっこう出題される可能性が高いと思われますので、これは覚えておいた方がいいと思います。
以下に例題を示します。

【例題 3】(平成14年度第2回試験 問5 類似問題) 難易度:★★★☆☆
下図は気象庁の解析予報サイクルにおけるデータの流れを表したものである。
図中の(a)〜(d)にあてはまる語句の組み合わせについて、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a)→予報→(b)→客観解析→(d)→初期値化→(a)に戻る
  (c)→品質管理↑

(1) (a):初期値、(b):第一推定値、(c):観測値、(d):解析値
(2) (a):初期値、(b):第一推定値、(c):解析値、(d):観測値
(3) (a):解析値、(b):第一推定値、(c):観測値、(d):初期値
(4) (a):第一推定値、(b):初期値、(c):観測値、(d):解析値
(5) (a):第一推定値、(b):初期値、(c):解析値、(d):観測値

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 初期値化とあるので次の(a)は初期値。客観解析はコンピュータによる解析なので次の(d)は解析値。

【解説】
解析予報サイクルについての問題です。
闇文字の解答にあるように、4つの内2つが分かれば解くことができます。
解析予報サイクルについて簡単に解説します。
まず初期値(6時間前に得られた解析値)を基に予報して第一推定値(6時間前に現在を予報した値)を得ます。
一方、気象観測で得られた値を品質管理(誤差修正)した上で、 その観測値第一推定値から客観解析(観測値を各格子点上にあてはめる)して、解析値を得ます。
そして、この解析値初期値化して、次の6時間後の初期値とします。
この様に、観測値第一推定値の誤差を次回の解析にフィードバックすることで、 後々より精度の高い解析値が得られるようになります。


【例題 4】(平成7年度第1回試験 問6 類似問題) 難易度:★★★★★
数値予報では、熱力学の第1法則、運動方程式、気体の状態方程式、空気及び水蒸気についての連続の式が使われている。
これらの式に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 熱力学の第1法則によると、空気塊が下降して断熱圧縮を受けたり、 空気塊中で水蒸気の凝結が起きたとき、その空気塊の温度は上昇する。
(2) 運動方程式は、水平2方向と鉛直方向についての3つの式からなるが、 いわゆる静力学平衡の式は、この内鉛直方向についての式から導かれた近似式である。
(3) 乾燥空気の状態を特徴づける物理量に、気圧、気温、密度がある。 気体の状態方程式によれば、この内の任意の2つの物理量の値を与えると、残りの物理量の値は一意的に決まる。
(4) 数値予報資料の中の渦度は、本来3次元ベクトル量である渦度の鉛直成分であり、 その時間変化を記述する渦度方程式は、運動方程式の鉛直成分の式と熱力学の第1法則とから導くことができる。
(5) 水蒸気の連続の式には、相変化による生成と消滅の項があるのに対し、 乾燥空気の連続の式にはこれに対応する項がない。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(4) 渦度方程式は水平成分の運動方程式を微分して得られる。

【解説】
文系の方にはかなり厳しい問題と言えます。
但し、物理化学をかじったことがある方はご存知だと思いますが、これらの式は基本に過ぎません。
つまり、理解していることは勿論、暗記してて当たり前の式なのです。
物理化学なんか知らん!と言っても、気象学を勉強している訳ですから、これらは理解しておかなければなりません。
この様な露骨な問題は最近あまり出題されていない様ですが、絶対出ないとも限りませんので勉強しておきましょう。
ここで、各記述について簡単に解説します。
(1)は、熱力学の第1法則はもとより、この内容は常識です。覚えましょう。
(2)の静力学平衡の式は、気象学では常識です。覚えましょう。
(3)の気体の状態方程式には、もう1つ気体定数がありますが、これは万物共通なので、 気圧、気温、密度の内2つが分かっていれば、気体の状態方程式からもう1つの未知の物理量が導き出せるので、これも正解です。
(5)は、連続の式(質量保存の法則)を知っていなくても、乾燥空気には水(水蒸気)がない為、相変化をする筈がなく、これも正しいと分かります。
(4)が一番難しい内容です。ここまで全て正しかったので、消去法で(4)が誤りと分かります。 渦度、渦度方程式に関しては、学科一般試験での出題が多いのでしっかり理解しておきましょう。


【例題 5】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★★☆
数値予報モデルとプロダクトの利用上の注意点について述べた次の文章(a)〜(d)の正誤について、 下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 数値予報モデルの各格子点での予報値は、その格子点の緯度経度にあたる地点に対する予想値ではなく、 そのまわり(1格子間隔程度)の空間での平均的値を表している。
(b) 数値予報モデルの特性として、予報初期時刻から2〜3時間は、 上昇気流や降水量がその後の値に比べて、平均的に小さく予想される傾向がある。
(c) 総観規模擾乱については、その移動を500hPa面の渦度場を追跡することによって把握できる場合が多いが、 中小規模擾乱については500hPa面の渦度場の追跡は一般に有効ではない。
(d) 梅雨前線は、通常、温度場で見るとあまり明瞭ではないが、 相当温位の場で見ると等値線の集中帯として明瞭に把握できる場合が多い。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)のみ誤り
(3) (c)のみ誤り
(4) (d)のみ誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) すべて正しい。

【解説】
数値予報モデルで出力されるデータは、(a)の通り1格子空間での平均的な値である為、 例えば雨量や風速等の場合、その格子内のある地点での値よりも小さくなります。
また、格子よりも小さいスケールの現象については、その把握が難しくなります。
よって、数値予報は総観規模の予報に適していると言えます。
現在の予想天気図は、そのほとんどが数値予報によるものです。
(d)のような記述が出題されることもあり、この様な内容は実技試験で必須の知識ですので、 確実に理解しておきましょう。

総観気象 (残り時間:34分)

現在は、下記の短期予報・中期予報長期予報に変わり、 無くなった筈のジャンル…なのですが、何故か未だに1〜2問が出題されています。(知らずに受験した私もビックリ!)
立体構造の把握(低気圧発達の判読等)、低気圧の構造と、台風の構造、進路、発達及び衰弱が主な内容となります。

出題される問題としては、 低気圧、台風に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
最近では、図表(気象衛星画像等)から読み取る問題が出題されたことがあります。

題材としては、低気圧台風が一番多いですが、 他にも成層の鉛直安定度高気圧ジェット気流等があります。

学科一般試験の知識も含めた幅広い知識が必要となる為、覚えるというよりも理解しておくことが重要になってくると言えます。
以下に例題を示します。

【例題 6】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
偏西風帯における各種擾乱に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 地上低気圧と上層トラフを結ぶ軸が上層ほど西に傾いていると低気圧は発達するが、 閉塞過程に入るとこの軸は直立するようになる。
(2) 発達中の低気圧の前面には相対的に暖かい空気の上昇、後面では相対的に冷たい空気の下降があり、 位置エネルギーから運動エネルギーへの変換が行われている。
(3) 寒冷低気圧は、下層から対流圏の上層まで周囲に比べて気温が低いばかりでなく、 その上の成層圏下部においても周囲より気温が低い。
(4) 日本付近で春や秋によく現れる移動性高気圧は、上層の気圧の尾根に対応して西から東に移動し、 気圧の尾根の前面にあたる高気圧の中心の東側では下降流が卓越して晴天の所が多い。
(5) 寒帯前線ジェット気流は、亜熱帯ジェット気流に比べて、季節により位置や強さが大きく変動する。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 寒冷低気圧の上空の成層圏下部では、気温が周囲より高温になっている。

【解説】
日本付近によく現れる低気圧等の各種擾乱について、その特性を知っておく必要があります。
最近、この様な問題はほとんど出題されないと思われますが、絶対出ないとも限りません。
出ても難易度は高くないので、最低限の知識をもってすれば解けるでしょう。


【例題 7】(平成14年度第2回試験 問10 類似問題) 難易度:★★★★☆
下の語句群は、条件付不安定な成層状態において、積乱雲群と低気圧性渦とが互いに発達を促し合う CISK(第2種条件付不安定)のメカニズムを説明したものである。
次の語句(a)〜(g)を正しく並べ替えた組合せとして最も適切なものを、下記の(1)〜(5)の中から一つ選べ。

(a) 自由大気中に低気圧性渦があり、地表付近では摩擦により渦中心に向かう流れが存在する。
(b) 凝結熱が大量に放出される。
(c) 渦中心付近の気温が上昇し、中心気圧が低下する。
(d) 積雲対流が活発化する。
(e) 角運動量保存則により、低気圧性渦が強まる。
(f) 渦中心に向かう流れが強まる。
(g) 収束した空気は、エクマン層上端を通って上昇する。

(1) (a),(g),(d),(b),(c),(f),(e),(g)以降を繰り返し
(2) (a),(e),(f),(g),(b),(d),(c),(e)以降を繰り返し
(3) (a),(f),(e),(g),(d),(b),(c),(f)以降を繰り返し
(4) (a),(e),(f),(g),(b),(c),(d),(e)以降を繰り返し
(5) (a),(g),(b),(d),(c),(f),(e),(g)以降を繰り返し

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 渦中心に向かう流れが収束・上昇し、雲ができることで、更にその流れが強まる。

【解説】
熱帯低気圧の発達に主な役割を果たすCISK(第2種条件付不安定)のメカニズムを説明した問題です。
いわゆる台風が発達するメカニズムであり、それに当てはめれば解くことができるでしょう。
(a)が最初で固定されている為、ここから考えていきます。
渦中心に向かう流れは、渦中心で収束・上昇(g)します。
対流活動が活発化(d)し、対流雲が発生することで凝結熱が大量に放出(b)されます。
その為、渦中心付近の気温が上昇し、上昇気流が強まって中心気圧が低下(c)します。
中心気圧が低下することで、渦中心に向かう流れが強まり(f)、角運動量保存則により、低気圧性渦が強まり(e)ます。
以降、これらを繰り返すことで、(熱帯)低気圧が発達していくという訳です。

短期予報・中期予報 (残り時間:28分)

実際、ほとんど出題されません。
題材としては、天気予報週間天気予報等があります。

基本的に、これらの内容を知っておけばよいでしょう。
以下に例題を示します。

【例題 8】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★★☆
短期予報・中期予報に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 気象庁の天気予報は、現在1日3回発表されており、今日、明日、明後日それぞれの天気、風向・風速、波高、最高・最低気温、降水確率である。
(2) 発表される天気予報は、発表された時刻から明後日の24時までの期間が予報される。
(3) 曇一時雨とは、雨が一時期連続して降り、その期間が全体の1/4未満である時に言う。
(4) 気象庁の週間予報は1日1回発表されており、天気、最高・最低気温、降水確率を日ごとに予報している。
(5) 週間予報は、数値予報の全球モデルによる7日先までの予報がベースとなっている。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) 7日先までではなく、8日先が正解。

【解説】
気象庁の天気予報は毎日5、11、17時に、週間予報は毎日11時に発表されています。
週間予報は翌日から7日間がその予報期間となりますが、この期間を全てカバーする為には、 7日先までのデータでは足りず、8日先までのデータが必要となります。

長期予報 (残り時間:26分)

1問は必ず出題されます。
特に最近の傾向として、第15問で1ヶ月予報に関する問題が出題されています。

出題される問題としては、1ヶ月予報で用いられている、数値予報モデルによるアンサンブル予報に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
要は、1ヶ月予報数値予報モデルアンサンブル予報について覚えておけばよいということになります。

但し、1ヶ月予報以外の題材も出題される可能性もある為、寒・暖候期予報等もおさえておきましょう。
以下に例題を示します。

【例題 9】(平成14年度第2回試験 問15 類似問題) 難易度:★★☆☆☆
数値予報モデルによるアンサンブル予報について述べた次の文章の下線部(a)〜(d)の正誤について、 下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

アンサンブル予報は、解析値に含まれる誤差程度の微小な違いのある(a)複数の初期値をもとに、予報を行う方法である。 アンサンブル予報の長所は、第一に、複数の予報があるので、気温や降水量の高い(多い)・平年並み・低い(少ない)階級が出現する (b)確率を見積もることができることである。第二に、個々の予報を平均したアンサンブル平均による予報成績は、 個々の予報の予報成績の平均より統計的に見て(c)よいことである。第三に、予報全体のばらつきが(d)小さい時に、 予報の信頼性が高いと判断できることである。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)のみ誤り
(3) (c)のみ誤り
(4) (d)のみ誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) すべて正しい。

【解説】
アンサンブル予報は、気象庁が週間予報後半や1ヶ月予報等で本格運用をめざしている新しい予報技術です。
アンサンブル予報について理解していれば簡単に解ける問題と言えます。
アンサンブル予報は、複数の初期値から数値計算し、それぞれ違う結果を得ます。
それぞれの結果の平均をとるので、ばらつきが小さいとほぼその予報(平均)通りになる期待がもてますが、 逆に大きいと、平均から大きく外れる可能性もあり期待薄と言えるわけです。

局地予報 (残り時間:22分)

だいたい1〜2問が出題されます。
集中豪雨、豪雨、熱雷、フェーン現象、海陸風等(放射冷却を含む)と、 各種天気図、数値予報のGPV(解析値)、衛星画像等気象資料の内容、利用上の注意と、 統計的予測の目的と手法が主な内容となります。
但し、2つ目(各種気象資料の概要)に関してはほとんど出題されていないようです。

出題される問題としては、あるメソスケール現象に関する記述の正誤を問う問題MOS、降水確率予報、ガイダンスに関する記述の正誤を問う問題が挙げられます。
過去には、図表(エマグラム等)から読み取る問題が出題されたことがあります。

題材としては、各メソスケール現象MOS降水確率予報コスト・ロスモデルガイダンスが取り上げられているようです。
以下に例題を示します。

【例題 10】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★☆☆☆
局地現象・予報に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) スーパーセル型ストームは、一般場の風の鉛直シヤーが強い状況で発生し、 1つの上昇流域を持つ1個の巨大な積乱雲からなっている。長時間にわたって持続し、しばしばひょうやダウンバースト、竜巻を伴う。
(2) 海陸風は海岸線に直角に吹き始めるが、時間が経つと地面や海面との摩擦の影響を受け、 風向きは時計回りに変化し、やがて海岸と平行になる。
(3) MOS方式というのは、過去の数値予報モデルの予測値とそれに対応する天気要素の統計的関係式を用いて、 数値予報モデルの予測結果から特定の地域や地点の天気要素を求める手法である。
(4) 「降水確率80%」という予報は、 その予報区内のどの地点でも予報時間内に1ミリ以上の雨の降る確率が80%であることを示している。
(5) 現在のガイダンス作成には、ニューラルネットワークやカルマンフィルターの方式が採用されている。 これにより、約20km四方の3時間毎の天気や降水量に関するガイダンス等が出力されている。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 地面や海面との摩擦の影響ではなく、コリオリ力の影響。

【解説】
この問題では、色々な題材を混ぜてありますが、試験では1つの題材について問う問題が出題されます。
特に「これ」が出やすい、という傾向がある訳ではないので、上記の題材については全て一通り理解しておいて下さい。
他にコスト・ロスモデルを使った計算問題が出題されることもあるので、これも解けるようにしておきましょう。

短時間予報 (残り時間:16分)

だいたい1問は出題されます。
短時間予測の目的、レーダー・アメダス合成図の概要、降水短時間予報の特性と利用上の注意が主な内容となります。

出題される問題としては、降水短時間予報やレーダー・アメダス解析雨量に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
違ったケースとしては、気象レーダー観測から降水短時間予報までのデータ処理の過程を問う問題がありました。

要は、降水短時間予報レーダー・アメダス解析雨量について覚えておけばよい、ということになります。
以下に例題を示します。

【例題 11】(平成7年度第1回試験 問12 類似問題) 難易度:★★☆☆☆
気象庁から提供されているレーダー・アメダス解析雨量と降水短時間予報に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) レーダー・アメダス解析雨量の作成には、レーダーで観測される降水強度を1時間積算した値が使用されている。
(2) レーダーで観測される降水強度には、レーダー電波の減衰、観測対象の雨雲の性質の違い等に起因する誤差が含まれている。 レーダー・アメダス解析雨量は、これらの誤差をアメダスの雨量計の観測値で補正して作成されている。
(3) 降水短時間予報では、数値予報モデルの予測結果も利用して、 地形による降水の発達・衰弱の効果の一部も計算して予報精度を高めている。
(4) 降水短時間予報では、アメダスで得られる気温の観測値を利用して雨と雪の判別を行い、予報精度を高めている。
(5) 降水短時間予報では、初期時刻以後に新たに発生する降水系(エコーシステム)による降水量の予測はできない。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(4) 雨と雪の判別は行わず、雪も降水量に換算して予報している。

【解説】
レーダー・アメダス解析雨量と降水短時間予報の内容を理解していれば簡単に解ける問題です。
まず、この2つ以外の題材は出題されません。
それぞれの長所と短所、特徴をしっかりおさえておきましょう。

気象災害 (残り時間:12分)

1問出題されるか、または出題されないこともあります。
風害、水害、その他気象災害の概要と気象条件が主な内容となります。

出題される問題としては、気象が原因となって発生する災害に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
違ったケースとしては、防災の為に留意すべき事項に関する記述の正誤を問う問題がありました。

題材としては、台風によって発生する災害が一番多いですが、 他にも集中豪雨や雷雨、雪崩等によって発生する災害が取り上げられているようです。

学科一般試験の知識も含めた幅広い知識が必要となる為、覚えるというよりも理解しておくことが重要になってくると言えます。
以下に例題を示します。

【例題 12】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
気象と災害の関係について述べた次の文章(a)〜(e)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 台風が日本列島を北上する場合、他の条件が同じであれば、北に開いた湾では、 台風が湾の西側を通ると予想されている時の方が、東側を通ると予想されている時より、 高潮に対しての一層の警戒が必要である。
(b) 台風が日本に近づいて、温帯低気圧に変わりつつある場合、時に強風域が拡大し、 台風から遠く離れた地域で風による災害が発生することがある。
(c) ひょうによる災害は、春から秋にかけて多く発生し、冬にはほとんど発生しない。 この理由は、冬には強い上昇流を伴う積乱雲が発生しにくく、雲中の小さな氷の粒がひょうにまで成長できないことや、 被害を受けやすい農作物等が栽培されていない為である。
(d) 表層雪崩は、先に積もっていた雪の表面に新たに積もった雪が、 気温の上昇や振動等の様々な原因によって滑り落ちる雪崩であり、厳冬期に発生しやすい。
(e) 山崩れや崖崩れによる災害の発生には、それが発生する直前の数時間内に降る雨の量の多寡が関係する他、 それ以前の長い期間にわたって降った先行降雨の影響が無視できない。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)と(c)が誤り
(3) (d)と(e)が正しい
(4) (b)と(d)が誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 東側を通ると予想されている時の方が、高潮に対しての一層の警戒が必要である。

【解説】
高潮の起こる要素・原因として、大潮時の満潮、低い気圧、風が挙げられます。
通常でも大潮時の満潮になることはありますが、この時期に台風の襲来が重なることで、高潮の危険性が高まります。
大潮時の満潮で普段よりも数メートル海面が上がりますが、台風襲来で、吸い上げ効果により気圧が1hPa低くなる毎に約1cm海面が更に上がり、 風が沖から海岸に向かって吹くことで海水が海岸に吹き寄せられる吹き寄せ効果により、海岸付近の海面が上昇します。
吹き寄せ効果による海面上昇は、風速の2乗にも比例する為、これが一番大きな原因となります。
この問題では、北に開いた湾において、台風が西と東のどっちを通過した方が吹き寄せ効果が得られるかを考えます。
台風の中では反時計回りに風が吹いていることから、台風が湾の東側を通ると北から風が吹く状況になる為、(a)の記述は誤りであると分かります。
(b)については、台風の勢力が落ちても、強風域も狭くなるとは限らない為(台風の変質)、正しいと言えます。

予想の精度の評価 (残り時間:8分)

だいたい1問は出題されます。
スキルスコア、ブライアースコア等の理解が主な内容となります。

ここで出題される形式は、計算問題がほとんどです。
予報の評価に使われる、スレットスコア、適中率、見逃し率、空振り率、ブライアースコアは計算できるようにしておきましょう。

また、計算問題の他にも、予想の精度の評価方法についてや その評価(値)から考察できることを問う問題等が出題されています。
以下に例題を示します。

【例題 13】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★☆☆☆☆
下表は降水予報の統計的評価を行った分割表の例である。
この例における適中率とスレットスコアはいくらか、下記の(1)〜(5)から正しく計算されている組合せを一つ選べ。
但し、数値は全て小数点第1位で四捨五入し、百分率で示している。

降水の有無予報
ありなし
実況あり9312
なし21618
111930

(1) 適中率:30、スレットスコア:56
(2) 適中率:83、スレットスコア:64
(3) 適中率:53、スレットスコア:30
(4) 適中率:83、スレットスコア:56
(5) 適中率:30、スレットスコア:64

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 適中率: ( 9 + 16 ) / 30 = 0.83、スレットスコア: 9 / ( 9 + 3 + 2 ) = 0.64

【解説】
適中率とスレットスコアの意味、算出方法が分かっていれば難なく解ける問題です。
適中率は、言葉の意味そのままで、予報が適中した確率です。
降雨あり予報で実際降雨があった場合(9)と降雨なし予報で実際降雨がなかった場合(16)が予報適中となるので、 これら2つのケースが全体(30)に対して占める割合が適中率となります。
スレットスコアは降雨なし予報で実際降雨がなかった場合(16)を除いた適中率(稀な現象に対して有効)です。
降雨あり予報で実際降雨があった場合(9)が、 全体(30)から降雨なし予報で実際降雨がなかった場合(16)を除いた部分(14)に対して占める割合が、スレットスコアとなります。
ちなみに、この問題の場合、見逃し率は3(予報なし、実況あり)/12(実況ありの総数)=0.25、 空振り率は、2(予報あり、実況なし)/11(予報ありの総数)=0.18となります。

気象の予想の応用 (残り時間:4分)

1問出題されるか、または出題されないこともあります。
予警報及び気象情報の内容と発表形態、気象資料の内容と提供形態と、 航空気象、波浪情報等、気象情報の目的に応じた利用方策の概要が主な内容となります。
但し、後者に関してはほとんど出題されていないようです。

出題される問題としては、気象庁が発表する予報、注意報、警報、気象情報に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
題材としては、予報等の発表の基準、予報等の内容、台風情報の内容が取り上げられているようです。

学科一般試験(法律関係)、実技試験の知識も含めた幅広い知識が必要となる為、 覚えるというよりも理解しておくことが重要になってくると言えます。
以下に例題を示します。

【例題 14】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
気象庁で行う注意報、警報、気象情報に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 一般利用の為の注意報には、気象・高潮・波浪・洪水注意報の4つがあり、 この内気象については、大雨・大雪・強風・風雪・濃霧・雷・乾燥・雪崩・着雪(氷)・霜・低温注意報がある。
(2) 隣りあった区域で同じ量の雪が降ると予想されているが、一方では大雪警報が、もう一方では大雪注意報が発表された。 これは、警報や注意報発表の目安となる基準値が異なることによる。
(3) 波浪予報や波浪注意報、警報で使われる波の高さ(波高)には、有義波高を用いる。 これは観測した波の高さの平均をとったものに相当する。
(4) 記録的短時間大雨情報は、大雨警報発表中に、その地域で数年に1回位しか現れないような激しい雨が降っている時に発表される。
(5) 中心付近の最大風速45m/s、風速15m/s以上の強風域の半径が450kmの台風を、「非常に強い台風」と呼ぶ。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 有義波高は、観測した波を高さの順に並べ、高い方から1/3の個数の波の平均をとったものに相当する。

【解説】
有義波高については、実技試験でも出題される可能性があるので覚えておきましょう。
(5)については、以前は台風の規模を「強さ」と「大きさ」をそれぞれ5段階で表していましたが、 現在、「強さ」では「弱い」と「並の強さ」、 「大きさ」では「ごく小さい」と「小さい(小型)」と「並の大きさ(中型)」という表現はされなくなりました。
これらの表現では「大したことない」ように聞こえますが、実際この程度の台風でも大きな被害、影響が出る危険性があり、 「侮らない」為にこれらの表現がなくなりました。

試験終了 (残り時間:0分)

さあ、残り時間も少なくなってきました。

問題は全部解けたでしょうか?
未だの人は、あてずっぽうでも全て答えを書き込みましょう。

多岐選択式なので、あてずっぽうでも正解となる確率が最低20%はあります。(0%よりかはマシです)
解答が済んでいる人は、さらっと全体を見直しておきましょう。

そうそう…、受験番号と氏名が正確に書かれているかも確認しておいて下さいね。

そして、試験官の合図で学科専門試験が終わりました。
合格に自信のある人もない人も、きちんと問題を持ち帰って、 約10日後に財団法人 気象業務支援センターのホームページで公表される解答と照らし合わせて下さいね。

ちなみに、このページの例題は全部で14問です。
10問以上正解していたならば合格です。

不合格っぽい人は次回に向けて、合格っぽい人は将来に向けて、 どこがいけなかったのか等、きちんと見直し、反省しておきましょう。

と言っても、まだ実技試験があるので、とりあえず一息ついてから、 学科試験のことは一旦忘れて、次の実技試験に臨みましょう。

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