気象予報士試験の傾向と対策
学科一般試験のススメ

ようこそいらっしゃいました!
こちらでは、実際の学科試験『予報業務に関する一般知識』の形式でまとめました。
気象予報士試験の勉強にお役立て下さい。

おことわり

このページは、2010年11月25日以降、記事内容の更新がされておりません。
現在の情報とは異なる部分が存在する可能性がありますので、大変申し訳御座いませんが、その旨ご理解の上でご覧頂ければ幸いです。

おことわり

このページでは、閲覧以外のいかなる目的の使用も禁止とさせて頂きます。
尚、このページに掲載されている例題、添付図表は、実際に気象予報士試験で出題されたものを参考にして作成しております。

試験の心得 (残り時間:--分)

学科試験 予報業務に関する一般知識は、原則として5つの選択肢から1つを選択する多岐選択式です。(マークシート形式)

試験は9:45〜10:4560分間となっています。
問題は全部で15問が出題されます。

単純に計算して1問につき4分なので、時間的にはちょうどいい位かと思います。
難易度はそんなに高くはありません。

さて、これから長い長い気象予報士試験が始まります。
皆さん、昨晩はよく眠れましたか?
一夜漬が効くような試験ではないので、試験前夜は夜更かしすることなく、早めに床に就きましょう。

皆さん、今朝は朝ごはんを食べましたか?
この日一日のコンディションを整える為にも、朝ごはんはしっかり食べておきましょう。
また、人間は脳が完全に目覚めるまでに数時間かかると言われていますので、当日は朝7時までには起床しましょう。

試験会場へは試験開始10分前までに入るようにしましょう。
最後に、気象予報士試験では昼休みが約1時間設けられていますので、道中でお弁当を買っておくなり、用意しておくことをオススメします。

とにかく、試験に向けて、万全の態勢で臨みましょう。

始める前に (残り時間:--分)

試験の前に、まず必要な物を机の上に揃えましょう。

試験要項に書いてある持ち込み可能な道具を見てみると、
受験票、HBの鉛筆(又はシャープペンシル)、プラスチック製消しゴム、色鉛筆、マーカーペン、定規、 デバイダー(分度器、又はコンパス)、ルーペ、ペーパークリップ、時計(計算機機能の付いていないもの)とあります。

この内、学科試験で必要な物は、受験票、HBの鉛筆(又はシャープペンシル)、プラスチック製消しゴム、時計だけです。
その他諸々は、実技試験で使う物なので、学科試験で机上に用意する必要はありません。

さて、問題用紙が配られたら、まず注意事項に目を通しましょう。
分かりきった内容ですが、試験開始までインターバルがあるので、気分を落ち着かせるのに使いましょう。

勿論、解答用紙に受験番号と氏名を書くのを忘れずに。
間違えると無効になっちゃうので、何度も確かめましょう。

全て準備が整えば、後は試験開始の合図を待つのみです。

試験開始 (残り時間:60分)

さあ、試験官の合図で学科一般試験が始まりました。

全体をさらっと見渡して、簡単な問題から解答していってもいいですが、 この方法だと多少時間をロスしてしまうので、1問目から順番に解いていっていいと思います。
それで、ちょっと時間をかけたい問題にぶつかった場合は、その問題を後回しにしていきましょう。

わかる問題は、確実に正解しておくことが必要です。
特に、ラスト約4問に出題される気象業務法その他の気象業務に関する法規の問題は、 確実に正解しておく必要があるので、これらを先に解答してしまうのもアリです。(学科一般試験の傾向と対策

わかる問題を解答し終わったら、残りの問題にとりかかりましょう。

時間をかけて考えても分からなかったら、とりあえず消去法で選択肢を絞り込みましょう。
最終的に1つに絞り込めなくても、あてずっぽうでも全て答えを書き込みましょう。

多岐選択式なので、あてずっぽうでも正解となる確率が最低20%はあります。(0%よりかはマシです)
絞り込めば絞り込むほど、正解となる確率が上がります。

大気の構造 (残り時間:60分)

だいたい1問が出題されます。
太陽、惑星の大気、地球の大気及び海洋と、対流圏、成層圏、熱圏及び外気圏、オゾン層と紫外線の吸収、電離層と電波の伝播が主な内容となります。

地球の大気に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
地球の大気の全体的な構成、特徴、構造を把握しておくことが必要となります。

また、特に成層圏についての出題も目立ちますので、よく理解しておきましょう 。
以下に例題を示します。

【例題 1】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★★☆
地球の大気に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 地球の大気はよく混合されており、乾燥空気のほとんどを占める窒素、酸素、アルゴンの割合は、 高度約80kmの中間圏界面付近までほぼ一定である。
(2) 平均的に見ると、対流圏界面の高度は、高緯度帯より熱帯の方が高い。
(3) 一般的に、成層圏における温位の鉛直方向の傾度は、対流圏に比べて小さい。
(4) 成層圏での気温の高度分布は、オゾンの紫外線吸収による加熱と 長波放射による冷却との収支で近似的に表すことができる。
(5) 熱圏では気体分子が極めて波長の短い紫外線を吸収し、高温となっており、 その温度は太陽活動の強さの影響を受けて大きく変動する。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 小さいではなく、大きい。

【解説】
大気の構造については、温度の鉛直分布が問われることが多いようです。
よって、各圏の温度の鉛直分布状況とその様な分布になる要因をおさえておくことが重要となります。
(2)について言い換えると、「対流圏界面の温度は、高緯度帯より熱帯の方が低い。」ということになります。
高緯度帯より熱帯の方が、当然地表面付近の温度は高いですが、 その影響で対流活動は非常に活発で、また空気の密度は小さくなっています。 その為、対流圏下部の温度傾度は小さく、上部は大きくなっていますが、 最終的に高緯度帯よりも熱帯の対流圏界面の高度の方が高くなっています。

大気の熱力学 (残り時間:56分)

だいたい3問が出題されます。
理想気体の状態方程式、静水圧平衡、熱力学の第一法則、乾燥断熱減率と温位、相変化、 大気中の水分、湿潤断熱減率、大気の鉛直安定度が主な内容となります。

出題形式は記述の正誤を問う問題と、計算問題が中心となります。

特に静水圧平衡飽和水蒸気圧エマグラム等はしっかり覚えておきましょう。
計算問題は時間をとられやすいので、よく慣れておく必要があります。
以下に例題を示します。

【例題 2】(平成14年度第2回試験 問7 類似問題) 難易度:★★★☆☆
地上から高さ100mまでの平均密度が1.20kg/m3の大気をAとし、地上から高さ100mまでの平均密度が1.15kg/m3の大気をBとする。
大気A、Bの高さ100mにおける気圧は等しいとする。
この時、大気A、Bの地上における気圧差はいくらか。
下記の(1)〜(5)の中から正しいものを一つ選べ。
尚、大気A、Bともに静力学平衡にあるとし、計算を簡単にする為、重力加速度は10m/s2とする。 また、1hPa = 100kg/m・s2である。

(1) 0.5hPa
(2) 1hPa
(3) 5hPa
(4) 10hPa
(5) 50hPa

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 大気Aの気圧差が-12.0hPa、Bが-11.5hPaなので、両者の差は0.5hPa。

【解説】
静力学平衡の式は、Δp = -gρΔzで表されます。
(単位体積におけるΔp:気圧差、g:重力加速度、ρ:平均密度、Δz:高さ差)
この式は覚えていて当然の式ですので覚えておいて下さい。
この問題は、この式さえ知っていれば、そこに数値を代入していくだけの簡単な問題です。

 大気A:Δp = -10×1.20×100 = 1200kg/m・s2 = 12.5hPa
 大気B:Δp = -10×1.15×100 = 1150kg/m・s2 = 12.0hPa

よって、大気AのΔp - 大気BのΔp = 12.0hPa - 11.5hPa = 0.5hPa
この様な計算問題では、単位をよく確認することを忘れないで下さい。
単位が違う場合、単位換算が必要になってきます。(この問題では必要ありません)


【例題 3】(平成15年度第1回試験 問3 類似問題) 難易度:★★☆☆☆
温位と相当温位について述べた次の文章(a)〜(d)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 空気塊を基準大気(1000hPa)まで乾燥断熱的に変化させた時の温度を、温位という。
(b) 乾燥空気塊が断熱的に運動する時、その空気塊の温位は保存される。
(c) 空気塊の中で凝結が生じても、その空気塊の相当温位は保存される。
(d) 湿潤空気塊の相当温位は、その空気塊の温位より低い。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)のみ誤り
(3) (c)のみ誤り
(4) (d)のみ誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(4) 低いではなく、高い。

【解説】
この問題ができないと実技試験なんかできません!
という位、温位相当温位は、気象予報士にとっては常識中の常識です。
その意味さえ理解していれば、この問題は必ず解けるはずです。


【例題 4】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★★★
フェーン現象に関する次の文章と表から、空欄(A)〜(C)を埋める数値の組み合わせを下記の(1)〜(5)から一つ選べ。

高度2000mの山脈がある。
その風上側山麓、及び中腹と山頂と風下側山麓の気象観測値を下表に示す。

地点高度気圧気温露点温度
風上側山麓0m1000hPa26℃18℃
風上側中腹(A)m900hPa??℃??℃
山頂2000m800hPa(B)℃??℃
風下側山麓0m1000hPa(C)℃??℃

この山脈の風上側山麓にあった空気塊が、斜面に沿って断熱的に上昇を始めた。
この空気塊は上昇の途中、風上側中腹で飽和に達した後、更に上昇を続け、山脈の頂上を越えて風下側の斜面を下降し麓に下りた。
但し、水蒸気の混合比 w = 0.6e/p、大気の乾燥断熱減率は10℃/km、湿潤断熱減率は5℃/km、 飽和水蒸気圧の温度依存性は下表に示された値であるとする。
ここで、eは水蒸気圧、pは気圧である。
また、凝結した水分は直ちに全て降水になるものとする。

気温飽和水蒸気圧気温飽和水蒸気圧
20℃23hPa14℃16hPa
19℃21hPa13℃15hPa
18℃20hPa12℃14hPa
17℃19hPa11℃13hPa
16℃18hPa10℃12hPa
15℃17hPa

(1) (A):800m、(B):12℃、(C):32℃
(2) (A):1000m、(B):11℃、(C):31℃
(3) (A):1000m、(B):11℃、(C):21℃
(4) (A):1000m、(B):6℃、(C):26℃
(5) (A):1600m、(B):8℃、(C):28℃

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 中腹:1000m、山頂:11℃、風下側山麓:31℃。

【解説】
熱力学においてはこの手の問題は定番です。
実技試験にもつながってきますので、確実に手早く解けるようになっておきたいところです。
まず、風上側山麓の大気の露点温度は18℃であるから、表より飽和水蒸気圧は20hPaとなり、混合比wは、

w = 0.6e/p = 0.6×20hPa/1000hPa

風上側で空気塊が上昇する時、混合比は保存されるので、中腹(p = 900hPa)での飽和水蒸気圧eは、

0.6×20/1000 = 0.6×e/900
2/100 = e/900
e = 18hPa

表より中腹の気温は、16℃であると分かります。
空気塊は上昇の途中にある中腹で飽和に達している為、ここまでは乾燥断熱減率で気温が下がっていきます。
よって、風上側山麓と中腹の気温差は、26℃-16℃ = 10℃ であることから、中腹の高度は1000mとなります。
飽和した後は、湿潤断熱減率で温度が下がっていきます。
残りの高度は1000m = 1kmなので、

16℃-5℃/km×1 = 11℃

よって、山頂の気温は11℃となります。
山頂を越えて空気塊が降下する時、空気塊の温度は乾燥断熱減率で上がっていきます。
高度差は2000m = 2kmなので、

11℃+10℃/km×2 = 31℃

よって、風下側山麓の気温は31℃となります。

降水過程 (残り時間:44分)

1問は必ず出題されます。
水滴の生成、エアロゾルと凝結核、雲粒の成長、雨粒の成長、氷晶の生成、氷粒子の成長、 雲、層雲と積雲内の降水過程、霧が主な内容となります。

雲の生成から降水に至る過程に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。
雨や雪が降るメカニズムをしっかり理解していれば、ほぼ解くことができるだろうと思われます。
以下に例題を示します。

【例題 5】(平成15年度第1回試験 問5 類似問題) 難易度:★★☆☆☆
降水過程について述べた次の文章(a)〜(d)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 単位体積に含まれる大気中のエアロゾルの数は、一般に陸上より海上の方が少ない。
(b) エアロゾルの1つである海塩粒子は、吸湿性があり水蒸気を吸収する為、雲粒の成長を抑制する働きがある。
(c) 温度0℃以上の暖かい雲の中では、雲粒の大きさが揃っている場合より、 様々な大きさのものが混在している場合の方が、雨粒の成長が速い。
(d) 過冷却の雲の中に水滴と氷晶が混在する時、両者に対する飽和水蒸気圧の違いから、氷晶の方が速やかに成長する。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)のみ誤り
(3) (c)のみ誤り
(4) (d)のみ誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 雲粒の成長を抑制する働きはない。

【解説】
降水過程について総合的に理解できていれば解ける問題です。
(b)の記述については、理解が不十分だと引っ掛かってしまうかもしれません。
エアロゾルは、雲粒や氷晶の生成に必要な凝結核や氷晶核となり得るものです。
よって、雲粒や氷晶の成長に対して働くことはなく、それさえ知っていれば難なく誤りであると分かるでしょう。
(c)については、併合過程を知っていれば正しいと分かります。
(d)については、水滴よりも氷晶の方が飽和水蒸気圧が小さいので、成長が速くなります。

大気における放射 (残り時間:39分)

1問は必ず出題されます。
太陽放射、吸収・透過・反射及び散乱、温室効果、放射平衡と大気温度の高度分布、地球大気の熱収支が主な内容となります。

太陽放射に関する記述の正誤を問う問題が主ですが、これに限らず様々な題材が出題されています。
太陽放射をはじめ、地球放射、電磁波の種類とその特性、黒体放射、熱収支等も含めた総合的な理解が必要と言えるでしょう。
以下に例題を示します。

【例題 6】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★★☆
放射に関する次の(1)〜(5)の下線部の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 黒体とは、全ての波長の放射を完全に吸収する理想的な物体を言い、それが射出する放射の全エネルギーは、 絶対温度の4乗に比例する。地表面や厚い雲は、赤外放射の波長領域では近似的に黒体と見なせる。
(2) 大気上端における太陽放射のスペクトルは、太陽の光球の表面温度における黒体放射のスペクトルとほぼ同じである。
(3) 大気上端の水平面に入射する1日当たりの太陽放射量は、春分期、秋分期の低緯度域で最大になる。
(4) 空気分子による太陽光の散乱はレイリー散乱と呼ばれ、散乱の強さは波長の4乗に反比例し、短い波長の光ほど強く散乱される。 この波長依存性が、青空や赤い夕日の色の現れるもとである。
(5) 地表面の放射冷却は、風の弱い晴天の夜に比べて、曇天の夜の方が概して弱い。 これは、雲や大気からの下向きの赤外放射を受けて、地表面が正味に放出する赤外放射量が減るからである。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 春分、秋分期の低緯度域ではなく、夏期の極域。

【解説】
これはちょっとした引っ掛け問題と言えます。
春分、秋分期の低緯度域、つまり赤道付近では、太陽がほぼ真上に来ます。
それ故、大気上端の水平面に入射する1日当たりの太陽放射量がこの付近で最大になると思いがちですが、 実はそうではなく、昼時間が長くなる夏期の極域で最大となります。
夏期の極域は白夜で1日中太陽が出ている為、1日中太陽放射を受けていることになります。
でも、極域より低緯度域の方がそもそも太陽放射量が多いのではないか、と思いますが、 大気上端においては、極域でも低緯度域でも単位面積あたりの太陽放射量は同じです。
よって、太陽放射を受ける時間が一番長い夏期の極域が正解となります。

大気の力学 (残り時間:34分)

だいたい2問が出題されます。
力学法則、コリオリ力、地衡風、温度風、摩擦効果、大気境界層が主な内容となります。

記述の正誤を問う問題よりも、図表から読み取る問題がよく出題される傾向があります。
計算問題も可能性があり、
コリオリ力地衡風摩擦力等、主要な計算式は覚えておく必要があるでしょう。

特に、渦度はちょっとレベルが高いですが、最近よく出題されるようなので、これも覚えた上理解しておく必要があります。
以下に例題を示します。

【例題 7】(平成15年度第1回試験 問7 類似問題) 難易度:★★★☆☆
総観規模の高気圧、低気圧における傾度風と、 同じ気圧傾度力をもつときの地衡風との強弱を比べた次の(1)〜(5)の記述のうち、正しいものを一つ選べ。

地衡風は傾度風に比べて
(1) 低気圧、高気圧ともに強い。
(2) 低気圧、高気圧ともに弱い。
(3) 低気圧、高気圧に関係なく、強さは同じである。
(4) 低気圧では弱く、高気圧では強い。
(5) 低気圧では強く、高気圧では弱い。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) 低気圧:地衡風>傾度風、高気圧:地衡風<傾度風。

解説
過去に複数回出題されたことがあり、覚えておくだけでも簡単に解ける問題です。
でも、ある程度どうしてそうなるのかを知っておきましょう。
各用語については、お天気用語辞典(大気の運動) を参照して頂いたら分かると思いますが、 実は地衡風と傾度風は、基本的には同じものなのです。
違うのは、地衡風がコリオリ力と気圧傾度力とのバランスのみから導かれるのに対し、 傾度風は更に遠心力を考慮して導かれたものであることです。
等圧線が直線でない場合には、遠心力の効果を考慮しているだけ、傾度風は地衡風よりもいい近似を与えています。
傾度風と気圧傾度力の関係を下図に示します。
これを見ると、低気圧性の風では傾度風は地衡風より弱く、高気圧性の風では傾度風の方が強いことが分かります。

傾度風と気圧傾度力の関係


【例題 8】(平成15年度第1回試験 問9 類似問題) 難易度:★★★★★
右下図においては、水平面上で点Aの西、東、南、北にある4点(P1〜P4)における水平風速成分を(u,v)の形式で示してある。
ここで、uは東西(x)方向の風速成分、vは南北(y)方向の風速成分であり、単位は m/s である。
また、点Aと周囲の4点との間の水平距離は、いずれも5kmである。
この時、点Aにおける渦度の鉛直成分はいくらか、下記の(1)〜(5)の中から最も適切なものを一つ選べ。
尚、渦度の鉛直成分は差分形式で表すと Δv/Δx -Δu/Δy である。

渦度の定義図 (1) 2×10-4 s-1
(2) 1×10-4 s-1
(3) 0 s-1
(4) -1×10-4 s-1
(5) -2×10-4 s-1

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(4) 正の渦度(反時計回り、低気圧性循環)

【解説】
最近、この渦度か収束・発散の問題が必ず1問出題されています。
まるっきり簡単な問題は出ないので、渦度の式をただ覚えるだけではなく、 それを使いこなせなければならないと言えるでしょう。
この問題には渦度の式が表記されていますが、これは簡素化されているので変形します。

Δv/Δx -Δu/Δy = (v2-v1)/Δx - (u4−u3)/Δy

また、ΔxとΔyはどちらも10km(104m)なので、

(v2-v1)/Δx - (u4−u3)/Δy = {(v2-v1) - (u4−u3)}/104

この式にv2=12、v1=11、u4=12、u3=10を代入すると、

{(12-11) - (12−10)}/104 = -1×10-4

よって、答えは(4)となる訳です。

気象現象 (残り時間:26分)

だいたい1〜2問が出題されます。
地球を巡る流れ、偏西風帯の波動と温帯低気圧、傾圧不安定波、寒冷前線と温暖前線と、 ベルナール型対流、雷雲と対流セル、巨大雷雨と竜巻、中規模対流系と梅雨期の大雨、温帯低気圧に伴う雨、 海陸風に伴う対流雲、熱帯の雲クラスターとスコールライン、台風の構造と発達過程と、 成層圏・中間圏内の構造、成層圏の突然昇温と準2年周期の変動が主な内容となります。

記述の正誤を問う問題だけではなく、図を伴って出題されることもあります。
出題数は少ないですが、意外と題材が多く、これといって何が出題される、といったことはありません。

それでも、最近はメソスケールの気象現象を題材として取り上げている傾向があるようです。
以下に例題を示します。

【例題 9】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★☆☆☆
大規模な大気の運動に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 傾圧不安定波に伴うトラフの前面では南よりの風が吹いており、層厚が大きく、気温が高い。 一方、リッジの前面では北よりの風が吹いており、層厚が小さく、気温が低い。
(2) 発達中の傾圧不安定波の構造を見ると、上空の気圧の谷は地上低気圧の中心の西側にある。
(3) 温暖前線が接近してくると、一般的にまず巻雲が現れ、次に巻層雲、その後高層雲に覆われ、 やがて乱層雲が現れて、持続的な降雨となる。
(4) 高度10〜20kmの下部成層圏では、1年を通じて赤道付近で気温が最も低くなっている。 しかし、高度25〜50kmの上部成層圏では、夏半球の極から冬半球の極に向かって気温が下降している。
(5) 冬の北半球高緯度の成層圏では、通常、極を取り巻いて流れる西風の渦が卓越しているが、 この渦が急激に崩壊し、これと共に極側で大きな降温が起こることがある。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) 降温ではなく、昇温。

【解説】
特に難しい問題は出題されないと思います。
但し、成層圏・中間圏の大気の運動と特有の現象(準2年周期振動成層圏突然昇温)はしっかり覚えておきましょう。足元をすくわれかねませんから。
(どっちだったかな…ということのないように。)


【例題 10】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
中小規模の大気の運動に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 風が鉛直方向に一様な場に発生する積乱雲は、大気の不安定度が水平方向に均一である為、 長時間にわたって持続することが多い。
(2) スーパーセル型のストームは、1つの上昇流域を持つ巨大な対流セルからなり、 しばしば雹や竜巻、ダウンバースト等の激しい現象を引き起こす。
(3) 海陸風の厚さは陸風より海風の方が厚い。
(4) 積乱雲が線状に組織化されたスコールラインは、その下層に線状のガストフロントを伴っており、 ガストフロントの通過時に明瞭な気温の降下と気圧の上昇が観測されることが多い。
(5) 台風は、積雲対流に伴って放出される潜熱をエネルギー源とし、その潜熱の放出により渦を強め、それらの相互作用により発達を続ける。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 長時間にわたって持続することは少ない。

【解説】
積乱雲(セル、マルチセル、スーパーセル、スコールライン等)とそれに伴う現象(雷、竜巻、ダウンバースト等)、 海陸風、台風の3つは出題傾向が高いので、これらは確実に理解しておきましょう。
(1)については、鉛直シヤーのない場に発生する積乱雲では、降水粒子が上昇流域の真上に生成され、 やがてその落下が始まると、上昇流域の中に下降流が起こり上昇流域が潰れる為、 鉛直シヤーのある場の積乱雲に比べると持続性は低いと言えます。

気候の変動 (残り時間:20分)

実際、ほとんど出題されません。
気候変動の歴史、太陽の活動度の影響、火山噴火の影響、海洋の影響とエルニーニョ、 炭酸ガスの増加と大気温暖化、気候変動とカオスが主な内容となります。

出題されるとすれば、異常気象の原因とされるエルニーニョ現象や 炭酸ガスの増加と大気温暖化についての問題に限られると思われます。

基本的に、これらの内容を知っておけばよいでしょう。
以下に例題を示します。

【例題 11】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★☆☆☆
気候変動に関する次の(1)〜(5)の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 温室効果等による温暖化により、大気に含むことのできる水蒸気量は増加するので、 降水量も増加するが、地域によって乾燥化するところもある。
(2) 大気中に含まれる微量気体である二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、フロン、オゾン等は赤外線を吸収し、温室効果を持つ。 しかし、水蒸気は赤外線を吸収しないので、大気中の水蒸気の増加により温暖化が促進されることはない。
(3) 半乾燥地帯等における過剰放牧等に起因する砂漠化は、地表面のアルベドを増大させることにより 地表面の熱収支を変化させ、気候変動に影響を及ぼす。
(4) エルニーニョ発生時には、太平洋の熱帯海域の一部で海面水温が高くなり、その地域の大気は海面から暖められる。 また、海面からの盛んな蒸発によって対流活動が活発になり大気全体が暖められるので、その地域の天候に大きな影響を与える。 しかし、その影響は熱帯域に限られ中・高緯度に現れることはない。
(5) 二酸化炭素は、森林の多い北半球で濃度の季節変動が大きい。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 水蒸気は、二酸化炭素よりも温室効果が大きい。

【解説】
かねてから環境問題に関心があれば、予備知識だけでも何とか解けるかもしれません。
でも、この様な問題に意外と引っ掛かってしまう方もいるのではないでしょうか。
例えば、日本付近では温暖化になると集中豪雨が多くなるというイメージがありますが、 世界を見ると乾燥地帯ではなおいっそう雨が降らなくなる、といったこともあります。
また、温室効果ガスと言えば、二酸化炭素、メタン、フロン等が有名ですが、水蒸気もこの仲間に入ります。
(4)については、エルニーニョ発生時というのがポイントです。
この様な問題では、文章に惑わされることのないように気を付けましょう。

気象業務法その他の気象業務に関する法規 (残り時間:16分)

だいたい4問が出題されます。
予報業務の許可、気象予報士の責務等と、警報及び注意報の実際、注意すべき事項と、気象業務法における義務、禁止事項と罰則規定と、 地域防災計画の考え方、避難の指示と、洪水予報と水防警報、消防法と防災情報等が主な内容となります。

特にラスト約4問でこのジャンルから出題される傾向があります。
出題される問題としては、予報業務の許可、気象業務法、災害対策基本法、防災情報に関する記述の正誤を問う問題がほとんどです。

題材としては、数が多いので割愛しますが、とにかく色々な題材が取り上げられています。
けっこう細かい内容を問われますので、できるだけ暗記し、また完全に理解しておくことが必要です。
以下に例題を示します。

【例題 12】(平成15年度第1回試験 問14 類似問題) 難易度:★☆☆☆☆
予報業務の許可及び気象予報士について述べた次の文章(a)〜(d)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 民間気象事業者が特定利用者向けに予報を行う場合、予報業務の許可が必要である。
(b) 観光協会の依頼により、その協会のインターネットのホームページに、 その地域の気象台が発表した府県天気予報を入力する場合、予報業務の許可は必要ない。
(c) 市町村長が当該市町村の住民の為に予報を行う場合、予報業務の許可は必要ない。
(d) テレビのウェザーキャスターとして天気予報の解説を行う場合、気象予報士の資格は必要ない。

(1) (a)のみ誤り
(2) (b)のみ誤り
(3) (c)のみ誤り
(4) (d)のみ誤り
(5) すべて正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(3) 許可が必要である。

【解説】
予報とは、気象・地象(地震・火山現象を除く)・水象の観測の成果に基づいて気象等の現象を予想し、発表することを言います。 気象庁以外の者が予報業務を行おうとする場合、気象庁長官の許可を得なけらばなりません。
(a)〜(c)は予報業務の許可について述べたものですが、その行為が予報にあたるかどうかを考えれば、 おのずと(c)が誤りであると分かります。
(d)は気象予報士について述べたものですが、その行為は予報ではなく解説なので、 予報業務が許されている気象予報士でなくても可能です。 もちろん、有資格者である方が視聴者の信頼を得られますので、現在ではほとんどの局が気象予報士を起用しているようです。


【例題 13】(みなみ気象研究所オリジナル問題) 難易度:★★★★☆
気象業務法に関する次の文章(a)〜(d)の正誤について、下記の(1)〜(5)から正しいものを一つ選べ。

(a) 予報業務の許可を受けた者が当該予報業務の目的及び範囲を変更する時は、その旨を気象庁長官に届け出なければならない。
(b) 予報業務を行った時は、予報事項の内容等を記録し、これを保存しなければならない。
(c) 予報業務を行おうとする者が気象庁長官の許可を受ける為には、予報事項を迅速に利用者に伝達できる通信の施設を備えなければならない。
(d) 予報業務の許可を受けている者が、予報業務を行う為気温の観測を行う場合、 その観測に用いる温度計は検定に合格したものでなければならない。

(1) すべて誤り
(2) (a)のみ正しい
(3) (b)のみ正しい
(4) (c)のみ正しい
(5) (d)のみ正しい

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(5) 予報業務の為の気象観測を行う場合、一定の気象測器は検定に合格したものでなければならない。

【解説】
最近は、あまりこの様な嫌らしい問題は出題されていませんが、 この問題の正解とその他の記述の誤り部分が分かるようなら、もう大丈夫と言っていいでしょう。
各記述の誤りは次の通りです。

(a) 届け出ではなく認可が必要。
(b) 保存する期間は2年間でよい。
(c) 予報事項ではなく、当該予報業務の目的及び範囲に係る気象庁の警報事項。

暗記するのはキツイので、要点だけを見い出し、そこだけ覚えて、後は理解しておけば良いかと思います。


【例題 14】(平成14年度第2回試験 問15 類似問題) 難易度:★★☆☆☆
災害対策基本法について述べた次の文章の空欄(a)〜(d)を埋める語句の組み合わせについて、下記の(1)〜(5)の中から正しいものを一つ選べ。

(a)は、法令の規定により、気象庁その他の国の機関から災害に関する予報若しくは警報の通知を受けた時、 又は自ら(b)をした時は、法令又は(c)の定めるところにより、予想される災害の事態及びこれに対してとるべき措置について、 関係(d)、指定地方公共機関、市町村長その他の関係者に対し、必要な通知又は要請をするものとする。

(1) (a):都道府県知事、(b):避難の指示等、(c):地域防災計画、(d):指定地方行政機関の長
(2) (a):都道府県知事、(b):災害に関する警報、(c):地域防災計画、(d):指定地方行政機関の長
(3) (a):都道府県知事、(b):災害に関する警報、(c):防災業務計画、(d):指定公共機関
(4) (a):指定行政機関の長、(b):災害に関する警報、(c):地域防災計画、(d):指定公共機関
(5) (a):指定行政機関の長、(b):避難の指示等、(c):防災業務計画、(d):指定公共機関

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(2) 指定地方公共機関とあるのでその前の(d)は指定地方行政機関の長。
(a)は避難の指示をしないので(b)は災害に関する警報。

【解説】
闇文字の解答にあるように、4つの内2つが分かれば解くことができます。
似たような語句が多く、こんがらがってしまうのが正直なところだと思います。
だからこそしっかり各語句の意味を覚えておく必要があります。

指定行政機関: 内閣総理大臣が指定する行政機関(気象台、消防署等)
防災業務計画: 指定行政・公共機関が作成する防災計画
地域防災計画: 地方公共団体が作成する防災計画
指定公共機関: 内閣総理大臣が指定する公共機関(NTT、日銀、日赤、NHK等)


【例題 15】(みなみ気象予報前線オリジナル問題) 難易度:★★★☆☆
防災情報に関する次の(1)〜(5)の下線部の記述のうち、誤っているものを一つ選べ。

(1) 2つ以上の都道府県の区域にわたる河川、又は流域面積が大きい河川で、 洪水により国民経済上重大な損害を生じる恐れがあるとして予め指定された河川を対象として、 流量、水位を示して行う洪水予報は、気象庁長官及び国土交通大臣が発表する。
(2) 都道府県知事は洪水予報の通知を受けた場合には、直ちに水防管理者に通知しなければならない。
(3) 国土交通大臣及び都道府県知事は、洪水、高潮によって災害の起こる恐れがある場合には、水防警報を行わなければならない。
(4) 気象庁長官等は、気象の状況が火災の予防上危険であると認める時は、その状況を直ちにその地の都道府県知事に通報し、更に市町村長に通報される。 市町村長は、これに基づき、或いは自ら気象の状況が火災の予防上危険であると認める時は火災警報を行うことができる。
(5) 災害が発生する様な事態においては、現地に最も近い市町村長が、 第1次的な責任者として災害応急活動を実施することが必要であり、各種の応急対策上の広範な権限が付与されている。

答えは闇文字にしてあります。見る場合は、カーソルでその部分をドラッグして下さい。

(1) 気象庁長官と国土交通大臣が共同して発表する。

【解説】
誰がどういう情報どの様にを発し、どういう行動を執らなければならないかをしっかりおさえておきましょう。
かなり混同しやすいので気を付けて覚えて下さい。
ここではあえて記述の正誤を問う形式にしましたが、実際は【例題 13】の様な形式で出題されるケースがほとんどの様です。

試験終了 (残り時間:0分)

さあ、残り時間も少なくなってきました。

問題は全部解けたでしょうか?
未だの人は、あてずっぽうでも全て答えを書き込みましょう。

多岐選択式なので、あてずっぽうでも正解となる確率が最低20%はあります。(0%よりかはマシです)
解答が済んでいる人は、さらっと全体を見直しておきましょう。

そうそう…、受験番号と氏名が正確に書かれているかも確認しておいて下さいね。

そして、試験官の合図で学科一般試験が終わりました。
合格に自信のある人もない人も、きちんと問題を持ち帰って、 約10日後に財団法人 気象業務支援センターのホームページで公表される解答と照らし合わせて下さいね。

ちなみに、このページの例題は全部で15問です。
11問以上正解していたならば合格です。

不合格っぽい人は次回に向けて、合格っぽい人は将来に向けて、 どこがいけなかったのか等、きちんと見直し、反省しておきましょう。

と言っても、まだまだ学科専門試験と実技試験があるので、とりあえず一息ついてから、 前の試験のことは一旦忘れて、次の学科専門試験に臨みましょう。

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