お天気用語辞典
大気の運動

こちらには、大規模なものも含めた大気の運動に関する用語をまとめました。

おことわり

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重要度 高: 予報士試験必出級の用語。

重要度 中: 予報士試験に出やすい用語。

重要度 低: 気象学常識レベルの用語。

《 50音順 》重要度 … ■:高■:中、□:低
ア行秋雨前線移動性高気圧 渦度エクマン層
オホーツク海高気圧温帯低気圧 温暖前線温度風
カ行寒冷前線寒冷低気圧 気圧傾度力傾圧大気
傾圧不安定波 コリオリの力--
サ行ジェット気流湿舌 シベリア高気圧収束
自由大気秋霖 接地層-
タ行大気境界層太平洋高気圧 地衡風停滞前線
トラフ ---
ナ行菜種梅雨---
ハ行梅雨前線発散 ハドレー循環フェレル循環
プラネタリー波閉塞前線 偏西風貿易風
マ・ヤ・ラ・ワ行モンスーン リッジ--
同義語プラネタリー境界層 → 大気境界層 季節風 → モンスーン
寒冷渦 → 寒冷低気圧 -
大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
観測・予報・法律 五十音順全索引
《 ア行 》

秋雨前線

9月上旬から10月中旬にかけて、日本付近に停滞する前線。
夏の間日本を覆っていた太平洋高気圧が後退し、 シベリア高気圧オホーツク海高気圧が勢力を増すことで出現します。
秋雨前線そのものは梅雨前線に比べるとやや弱いが、前線上を低気圧が東進する際や、 台風が北上する際には、思わぬ大雨をもたらすことがあります。
この前線を境に、夏から秋へと季節が移行します。

移動性高気圧

シベリア高気圧太平洋高気圧のように停滞する高気圧に対して、 2つの低気圧の間にあって移動していく高気圧のこと。
通常、日本付近では、春と秋に低気圧に続いて、大陸から東へ移動します。
だいたいが、温かく乾いた空気を持っており、晴天をもたらします。

渦度

渦状の大気の流れの強さの度合いのこと。
大気中には高・低気圧をはじめとする様々な渦状の流れがあり、 大気が渦の中心に吹き込んでいる場所を正(+)の渦度、吹き出している場所を負(−)の渦度と言います。
負・正渦度極大域の多くは、それぞれ地上の高・低気圧に対応しています。 上空の正渦度極大域が地上低気圧より西に傾いていれば低気圧は発達、直立または東に傾いていれば衰弱します。
また、渦度0の線はジェット気流に対応しています。

エクマン層

地上数10mから約1000mまでの大気の層のこと。摩擦層、混合層とも言う。
地表面の凸凹等の為に絶えず乱されており、 特に日中は、接地層から熱や水蒸気を受けた不規則な対流があり、よく混合されています。 よって、温度の高度勾配は乾燥断熱減率をもち、 温位、風速、混合比はほぼ一様となっています。

オホーツク海高気圧

オホーツク海で発生する寒帯海洋性気団の1つ。
冷たく湿った空気を持つ停滞性の高気圧です。
春から初夏にかけて、アムール川等から流れ込んだ冷たい雪解け水の影響を受けて発生します。
日本における影響は、梅雨前線の発生や、 東北地方に吹き込む北東の風(やませ)による、低温日照不足が挙げられます。
通常、夏になると弱まりますが、これが強いままだと、梅雨明けの遅れ冷夏に繋がります。

温帯低気圧

中緯度帯(温帯)でよく見られる低気圧。
寒気と暖気がぶつかり合うことで発生する前線を伴っています。
低気圧には、周りから反時計回りで空気が吹き込み(南半球では時計回り)、 その空気は低気圧の中心で上昇気流となり、雲をつくって雨を降らせます。
また、その際放出される凝結熱(潜熱)が空気を暖めることで、上昇気流が強まり、低気圧は更に発達します。
一般的な温帯低気圧の一生を下に示します。

  1. 寒気と暖気の境目に停滞前線が発生。
  2. 寒気と暖気が押し合うことで停滞前線が波打ち、その北端に低気圧が発生。
  3. 北西から寒気が押し(寒冷前線)、南東から暖気が押し(温暖前線)、低気圧が発達。
  4. 寒冷前線が一部温暖前線に追いつき、閉塞前線となる(最盛期)。
  5. 閉塞点で新しい低気圧が発生、もとの低気圧は衰弱。

温暖前線

暖気が寒気を押しながら移動する前線。
通常、温帯低気圧の東側に現れ、広範囲に降水をもたらします。
一般的に、地上の一地点から見ると、弱めの長雨が観測されます。
これとは全く逆のタイプの前線を寒冷前線と言います。

温度風

温度の水平傾度(ギャップ)がある為に、地衡風が高度とともに変化していることを温度風の関係といいます。
北半球では、高温の部分(南)を右に見るようにして地衡風(西風)は高さとともに増大します。 対流圏内では南北方向の温度傾度は中緯度に集中しているので、 中緯度地帯の上空で偏西風が最大となる訳です。

《 カ行 》

寒冷前線

寒気が暖気を押しながら移動する前線。
通常、温帯低気圧の西側に現れ、狭い範囲に降水をもたらします。
一般的に、地上の一地点から見ると、短時間の激しい雨、突風、雷等が観測されます。
これとは全く逆のタイプの前線を温暖前線と言います。

寒冷低気圧(寒冷渦)

中心に寒気核を持つ低気圧。
前線を伴わなず
、等圧線はほぼ円形又は楕円形を描きます。
偏西風によるブロッキング現象においてしばしば出現する、 寒気が南下して分離された低気圧を切離低気圧(カットオフ ロー)と言いますが、 これが地上天気図に現れるような場合、地上から上層にかけて周囲より冷たい為、寒冷低気圧や寒冷渦と呼ばれます。
又、上層では低気圧として解析されるが、下層ではほとんど見られなくなる上層の寒冷低気圧もあります。
いずれの場合も、上空に強い寒気を持っている為、大気が不安定となって積乱雲等の対流雲が発生し、 地上に激しい気象現象(突風、雷、雹、短時間強雨等)をもたらすことがあります。
更にこれが熱帯地方まで南下すると、台風にまで発達することもあります。

気圧傾度力

高圧部と低圧部の間にある水平面上の気圧差による力のこと。
隣り合った等圧線に囲まれた微小面積とその面を底面とする微小容積があるとします。

気圧傾度力 = - (1/ρ)(Δp/Δn)
* ρ:微小容積内の空気密度、Δp:微小容積にかかる気圧の差、Δn:隣り合った等圧線の間隔(距離)

負の符号がついているのは、高圧部から低圧部に力が向いていることを示す為です。
気圧はいつも高度とともに減少している為、鉛直方向にも下から上に気圧の差による力が働いています。 しかし、大気の運動においては、鉛直方向の加速度は重力に比べると無視できるくらい小さく、 鉛直方向の気圧傾度力は重力と釣り合った状態にあり、運動に関係しないと見ることができます。

傾圧大気

大気の等圧面と等密度面を描いた時、両者が交わったら、その大気は傾圧大気であると言います。 等圧面と等温面が交わるような大気とも言います。
等圧面上で温度の水平傾度があると、温度風の関係により、地衡風が高度と共に増大する為、 傾圧大気とは風速が高度と共に増大している大気とも考えられます。
逆に、これらが交わらずに平行になっている大気を順圧大気と言いますが、実際の大気は傾圧大気です。

傾圧不安定波

温度傾度(ギャップ)がある限度を越すと、大気はその状態に耐え切れず、 温度の南北傾度を弱めようと波動を起こします。 その波動が傾圧不安定波で、偏西風も傾圧不安定波の1つです。
傾圧不安定というのは、本質的には偏西風が高度と共にあまり急激に増加すると、その様な状態は不安定で、 東西方向に数1000kmの波長を持つ波動を起こします。

コリオリの力

地球の自転による見かけの力のこと。
大気も固体地球と同様に自転をしており、その移動の速さは、高緯度地方ほど遅く、低緯度地方ほど速くなっています。
高緯度地方にある遅い大気が低緯度地方に移動すると、速い地表に遅い大気がやってくることになります。 この時、地表にいる人から見れば、自転の方向とは逆の方向に風が吹いていると感じられる訳です。
北半球なら、真っ直ぐ北から南に吹いた風が、実際にはやや北東から南西に吹いたことになります。
何らかの力が風向きを変えた訳ですが、実際には地球の自転によるもので、 何かの力が作用した訳ではなく、あくまで、そう見えるだけなのです。

《 サ行 》

ジェット気流

対流圏上部にある幅数100kmの強風帯のこと。 赤道付近に現れる赤道ジェット気流や、 中緯度の偏西風の内、北に現れる寒帯ジェット気流、南に現れる亜熱帯ジェット気流等があります。
ジェット気流の強さは、南北両半球ともに冬季に最大になります。

湿舌

天気図上で、湿った気流が幅広く舌状に伸びて来ている部分のこと。
梅雨時等に東シナ海方面から日本付近に、太平洋高気圧の西端を回って来た南からの湿った風が入る、 つまり、湿舌が伸びて来ることが多く、九州地方を中心に大雨をもたらすことがあります。

シベリア高気圧

シベリア地方で発生する寒帯大陸性気団の1つ。
冷たく乾いた空気の塊で、背が低い高気圧です。
シベリア地方で停滞していますが、冬季には勢力を増して、日本付近にも張り出してきます。
日本における影響については、北西の季節風による日本海側の大雪、 太平洋側の低温乾燥が挙げられます。
何故、乾いているのに雪が降るかと言うと、この北西の風が日本海を通過する際、 熱と水蒸気を補給することで、降雨(雪)能力を持つ筋状の雲をつくるからです。

収束

一般的には、ある一点に集まるという意ですが、 気象学では、ある面(四角形)に各辺から総合的に風が吹き込むことを意味します。
収束が起これば、吹き込んだ空気は圧縮され密度が増しますが、この効果は微々たるものです。 当然下は地面である為、空気は上昇を余儀なくされ、これが上昇気流となります。

自由大気

大気境界層から対流圏界面までの大気の層のこと。
対流が活発な大気境界層とは違い、基本的に安定な成層をしています。

秋霖

11月中旬から12月上旬にかけて、日本付近に前線が停滞する時期のこと。
冬の空気を持つシベリア高気圧が勢力を増し、 移動性高気圧等による秋の空気が後退することで出現します。
この停滞前線は他の停滞前線に比べるとかなり弱く、出現しない年もあります。
この前線を境に、秋から冬へと季節が移行します。

接地層

地上から数10mまでの大気の層のこと。
地表面から直接受け取った熱や水蒸気を上のエクマン層に伝える役割を担っています。
しかし、この層内では激しい運動がある訳ではありません。

《 タ行 》

大気境界層(プラネタリー境界層)

対流圏までの大気の最下層部分(地上から約1000mまでの大気の層)のこと。
大気境界層は地球大気の全質量の約10%を占めており、 この層で地表面と大気との間で熱や水蒸気等のやりとりが行われています。
大気境界層の厚さは、平均的には約1000m程度ですが、 大気の安定度によって約30mから3kmまで変化することがあります。
また、地表面に接する接地層とその上のエクマン層に分けて考えられることがあります。

太平洋高気圧

北太平洋の亜熱帯高気圧で発生する熱帯海洋性気団の1つ。
温かく湿った空気の塊で、背が高い高気圧です。
北太平洋で停滞していますが、夏季には勢力を増して、日本付近にも張り出してきます。
日本における影響は、南東の季節風による、太平洋側の降雨、 三陸沖以北の海霧、西日本の高温湿潤が挙げられます。

地衡風

高気圧から低気圧に向かって風が吹く時、コリオリ力の影響で、実際には等圧線と平行に吹く風のこと。
北半球では低気圧側を左に見ながら吹きます(南半球では逆)。
地衡風は、低気圧および高気圧の渦の方向を決定しているものです。

停滞前線

前線を挟む暖気と寒気の勢力がほぼ拮抗しており、その場に止まってあまり動かない前線のこと。
停滞前線は、暖気・寒気のどちらかの勢力が強くなると、温暖前線寒冷前線に変化します。
停滞前線の代表的なものには、梅雨前線秋雨前線があり、 菜種梅雨秋霖の時期にも現れます。

トラフ

いわゆる気圧の谷のこと。
天気予報でよく見る地上天気図や、500hPa面の高層天気図において、 等圧線(500hPaでは等高線)が、北に開いて南に突き出た形となっている部分をトラフと言います。
また、500hPa面のトラフのことを、上層トラフとも言います。
一般的に、温帯低気圧の後側(西側)に見られ、これが近づくと天気は下り坂になります。
もちろん、これとは逆にリッジがあります。

《 ナ行 》

菜種梅雨

3月中旬から4月上旬にかけて、日本付近に前線が停滞する時期のこと。
冬の間日本を覆っていたシベリア高気圧が後退し、 移動性高気圧等による春の空気が勢力を増すことで出現します。
この停滞前線梅雨前線秋雨前線に比べると弱く、 強い雨は少ないですが、しっかりとした雨が降ります。
桜の時期と重なると、花散らしの雨となります。
この前線を境に、冬から春へと季節が移行します。

《 ハ行 》

梅雨前線

6月上旬から7月中旬にかけて、日本付近に停滞する前線。
太平洋高気圧オホーツク海高気圧が勢力を増すことで出現します。
暖冷双方の勢力が強まりぶつかる為、他の停滞前線に比べるとかなり強いものとなっています。
前線上を低気圧が東進する際や、台風が北上する際には、大雨をもたらします。
特に湿舌の入りやすい梅雨末期は、集中豪雨となりやすく、毎年大きな災害が起こっています。
この前線を境に、春から夏へと季節が移行します。

発散

一般的には、ある一点から散らばるという意ですが、 気象学では、ある面(四角形)に各辺から総合的に風が吹き出すことを意味します。
発散が起これば、風が吹き出すとその場の空気は希薄になり密度が減りますが、この効果は微々たるものです。 当然下は地面である為、上空から空気が補充され、これが下降気流となります。

ハドレー循環

赤道付近で上昇し、南北緯30°辺りで下降する大きな大気の循環のこと。
赤道から極地までの大気大循環の構造を見ると、 極地と赤道付近という直接的な熱・冷源によるそれぞれの直接循環の間に、 実際の熱・冷源を持たない間接循環が存在しています。
従って、赤道から極地までの間に3つの大きな循環が、南北両半球にそれぞれ存在している訳です。
ハドレー循環はこの直接循環であり、間接循環はフェレル循環と呼びます。

フェレル循環

南北緯60°辺りで上昇し、南北緯30°辺りで下降する大きな大気の循環のこと。
赤道から極地までの大気大循環の構造を見ると、 極地と赤道付近という直接的な熱・冷源によるそれぞれの直接循環の間に、 実際の熱・冷源を持たない間接循環が存在しています。
従って、赤道から極地までの間に3つの大きな循環が、南北両半球にそれぞれ存在している訳です。
フェレル循環はこの間接循環であり、直接循環はハドレー循環と呼びます。

プラネタリー波

地球を取り巻く大気の波動(定常波)の中で、波長が6,000km以上にも及ぶ超長波のこと。
地球全体を1〜5個の波が取り巻いています。その進む速さは、経度にして1日に東へ1〜2°程です。

閉塞前線

温帯低気圧で、寒冷前線温暖前線に追いついた前線。
閉塞前線には、追いついた寒気の温度により、温暖前線に似た性質を持つもの(下図左)と、 寒冷前線に似た性質を持つもの(下図右)とがあります。

閉塞前線の例

偏西風

中緯度の対流圏上層に吹く帯状の西寄りの風のこと。
その内、特に顕著な強風帯をジェット気流と言います。

貿易風

赤道付近に吹く東よりの風。
赤道より北では北東の風、南では南東の風となっている為、赤道で収束し、上昇気流が発生します。
よって、赤道付近は低気圧帯となっており、雨が降り易い気候となっています。
熱帯雨林気候における、降雨の原因の1つです。

《 マ行 》

モンスーン(季節風)

季節的に(特に夏季と冬季とで)風向を大きく変える地表付近の風。
モンスーンは、日本付近を含むアジア、アフリカ赤道付近、北極地域に見られます。
モンスーンが起こる主な原因は、大陸と海洋との季節による大気加熱の差です。
夏季には、大陸の大気がより多く加熱される為、海洋上に高気圧があります。
逆に冬季には、海洋の大気がより多く加熱される為、大陸上に高気圧があります。
この為、風向や降水等の気象が夏冬で逆になります。
日本付近では、夏季は海洋上に太平洋高気圧ができ、南東の風が吹くことで、太平洋側の地域で雨が降りやすくなります。 冬季は大陸上にシベリア高気圧ができ、北西の風が吹くことで、日本海側の地域で雪が降りやすくなります。

《 ラ行 》

リッジ

いわゆる気圧の尾根のこと。
天気予報でよく見る地上天気図や、500hPa面の高層天気図において、 等圧線(500hPaでは等高線)が、南に開いて北に突き出た形となっている部分をリッジと言います。
また、500hPa面のリッジのことを、上層リッジとも言います。
一般的に、移動性高気圧の後側(西側)に見られ、これが近づくと天気は上り坂になります。
もちろん、これとは逆にトラフがあります。

大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
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