お天気用語辞典
大気における放射

こちらには、大気における放射に関する用語をまとめました。

おことわり

このページは、2010年11月25日以降、記事内容の更新がされておりません。
現在の情報とは異なる部分が存在する可能性がありますので、大変申し訳御座いませんが、その旨ご理解の上でご覧頂ければ幸いです。

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重要度 高: 予報士試験必出級の用語。

重要度 中: 予報士試験に出やすい用語。

重要度 低: 気象学常識レベルの用語。

《 50音順 》重要度 … ■:高■:中、□:低
ア行アルベドX線 温室効果-
カ行可視光線γ線 黒体放射-
サ行散乱紫外線 赤外線-
タ行太陽放射地球放射 電磁波電波
ナ・ハ行熱収支放射平衡温度 放射冷却-
マ・ヤ・ラ・ワ行窓領域---
同義語赤外放射 → 地球放射-
大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
観測・予報・法律 五十音順全索引
《 ア行 》

アルベド

入射太陽放射量と惑星で反射された放射量の比のこと。
地球の場合、地球に入射した太陽放射は、 その一部を大気中のエアロゾルや雲等に散乱・反射され、 また地表面でも反射されて再び宇宙空間に戻ります。
これが惑星で反射された放射量となります。
地球のアルベドは約0.3(約30%が反射)です。

X線

波長約1pm〜10nmの領域の電磁波のこと。
レントゲンで使われているのは皆さん御存知の通りだとは思いますが、 実は紫外線以上に大変危険な電磁波の1種です(レントゲンのは弱いX線で、且つ一瞬なので大丈夫)。
これより波長が長い電磁波が紫外線、 短い電磁波がγ線です。

温室効果

地球大気は、太陽放射紫外線以外はあまり吸収しないが、 地球放射はよく吸収する。
これにより、大気の下層や地表付近の気温が上昇する効果を温室効果と言います。

温室効果をもたらす大気成分(温室効果ガス)で最も顕著なのは、二酸化炭素と水蒸気です。
近年は、二酸化炭素等の増加により、温室効果が強まることで、地球温暖化が問題になっています。

《 カ行 》

可視光線

人間の眼で見ることができる波長約0.38〜0.77μmの領域の電磁波のこと。
波長の短い順に、赤、橙、黄、緑、青、紫色の光に見えます(人間がそう見えているだけ)。
主に照明や電気製品に使われていて、私たち人間はもちろん、生物にとって欠かせないものです。
これより波長が長い電磁波が赤外線、短い電磁波が紫外線です。

γ線

波長約1pm以下の領域の電磁波のこと。
最強の電磁波にして、最強の放射線であり、当然浴びると被曝します(被曝どころじゃない)。
放射線治療で使われています(患部のみピンポイントなので大丈夫)。
これより波長が長い電磁波がX線です。

黒体放射

あらゆる物体は、その物体の温度が絶対零度(0K = -273.15℃)でない限り、 絶えず電磁波を放射しています。
物体の表面の単位面積(1m2)から単位時間(1秒)に放射されるエネルギー量は、その物体の性質と温度によります。
一般によく放射する物体は、入射してきた放射をよく吸収します(キルヒホッフの法則)。
従って、どんな波長の電磁波でも、入射してきた電磁波を全て完全に吸収してしまうという仮想的な物体を考えると、 その物体は与えられた温度で理論上最大のエネルギーを放射する物体であると言えます。
この様な仮想的な物体のことを黒体と言います。

実際に黒体のような物体は存在しませんが、太陽放射(太陽の光球温度: 5,780K = 5,507℃)や 地球放射(地球の放射平衡温度:255K = -18℃)を 黒体放射と仮定することで、様々な計算がしやすくなります。

《 サ行 》

散乱

地球大気には無数の気体分子や多数のエアロゾルが浮遊しており、 電磁波がこれにぶつかると、粒子を中心として2次的な(元とは別の)電磁波が生じ周囲に広がります。
これを散乱と言い、この為、元の電磁波の入射方向の放射量は減少し、 その結果、地表面に到達する太陽放射のエネルギーは少なくなります。
電磁波の波長とそれを散乱させる粒子の半径の相対的な大きさによって、 以下の様な違った特性をもつ散乱が起こります。

レイリー散乱

電磁波の波長が粒子の半径より非常に大きい場合の散乱のこと。
電磁波が太陽放射(可視光線)で、粒子が空気分子である場合、 波長の短い波長ほど、強く散乱されます。
つまり、紫や青色の光線ほど散乱され易く、空の色が青く見えるのはこの為です。
ここで、紫色の光線は何処へ行ってしまったのかと言うと、 大気を通過する途中で、地上に到達する前に散乱され減衰してしまっているのです。
飛行機から上空を見ると、ここでは未だ紫色の光線は残っていて、やや紫色っぽく見えます。
要するに、大気の中を通る距離が長い程、波長の短い波長から散乱されてしまう訳で、 地表面に対し垂直に入ってくる(お昼頃の)太陽光では、未だ青色の光線も減衰されずに残っていますが、 ほぼ水平に入ってくる(朝や夕方の)太陽光では、青色どころか緑色の光線も減衰してしまい、 結局残った橙色や赤色の光線だけが見えている訳です。

ミー散乱

電磁波の波長と粒子の半径が同じ程度の大きさである場合の散乱のこと。
電磁波が太陽放射(可視光線)で粒子が雲粒エアロゾルである場合、 散乱光は入射した太陽光と同じ様な白色光が現れます。
都会の汚れた空や雲が白く見えるのは、このミー散乱による現象です。

幾何光学的

電磁波の波長が粒子の半径より非常に小さい場合の散乱のこと。
電磁波が太陽放射(可視光線)で粒子が雨粒である場合、 これがプリズムの役割を果たすことで、虹が現れます。

紫外線

波長約10nm〜0.38μmの領域の電磁波のこと。
この紫外線より波長の短い電磁波は、地球の生物にとって有害な電磁波となります。
地表に届く紫外線は波長の長いものが主で、日焼けの原因になりますが、 浴びすぎると、しみやしわ、ひどくなると皮膚癌の原因にもなるので注意が必要です。
これより波長が長い電磁波が可視光線、短い電磁波がX線です。

赤外線

波長約0.77〜100μmの領域の電磁波のこと。
暖房器具の他、熱源の探知、無線情報交換にも使われています。
これより波長が長い電磁波がマイクロ波(電波の1種)、 短い電磁波が可視光線です。

《 タ行 》

太陽放射

太陽光、即ち太陽からの電磁波によるエネルギーの伝達のこと。
地球大気の上端に届く太陽放射のほとんどが波長0.2〜7μmの範囲内(放射強度の最大値:波長約0.475μm)の電磁波です。
太陽放射による電磁波の内訳は、多い順に可視光線赤外線紫外線となっています。
また、相対する地球放射に比べて、短い波長の電磁波が多いので、短波放射とも言います。

地球放射(赤外放射)

地球から宇宙空間に出て行く電磁波によるエネルギーの伝達のこと。
地球放射は、固体地球からの放射と地球大気からの放射に分けることができ、後者を特に大気放射と呼んで区別することもあります。
地球放射のほとんどが波長4〜100μmの範囲内(放射強度の最大値:波長約11μm)の電磁波で、 その大部分が赤外線である為、赤外放射とも呼ばれています。
また、相対する太陽放射に比べて、長い波長の電磁波が多いので、長波放射とも言います。

電磁波

電磁場が周期的な振動によって波のように伝わるもの。
電波赤外線可視光線紫外線X線γ線(波長の長い順)は、全て電磁波の1種です。
波長が短い程、その電磁波のもつエネルギーが高く、破壊力が増しますが、 大気中では、気体分子にぶつかり易くなる為、減衰し易くなります。
呼び名の違いはその波長の差によるもので、本質的には全て同じものです。

電波

波長約100μm以上の領域の電磁波のこと。
この内、波長約100μm〜1mの領域の電磁波をマイクロ波といいます。
マイクロ波は電子レンジ等に、それ以上に波長の長い電波はラジオ電波等に使われています。
これより波長が短い電磁波が赤外線です。

《 ナ行 》

熱収支

太陽放射地球放射、大気放射による、 地球全体で見た熱エネルギー収支のこと。
地球に入射した太陽放射のエネルギー(100%とする)の内、 22%は雲、エアロゾル、大気による反射や散乱により、 また9%は地表面における反射により宇宙空間に戻されます。
これら計31%分のことをアルベドと言います。
後の69%の内、20%は雲を含めた大気に吸収され、残りの49%は地表面に吸収されます。
次に地球放射を見てみると、固体地球からの放射のエネルギー(144%)は、 そのほとんど(132%)が大気に吸収され、残りの12%が宇宙空間へ放出されます。
その一方で、大気自身も地表面と宇宙空間に放射を行っており(前者:95%、後者:57%)、 太陽放射および固体地球からの放射・伝導によって得たエネルギーを放出しています。
これらの収支は合計0となり、温度が安定しているのです。

熱収支図

《 ハ行 》

放射平衡温度

惑星は反射されなかった太陽放射を吸収して自身を暖めている訳ですが、 その一方で、惑星自身も絶えず放射して熱を失っています(地球放射)。
この両者が釣り合って惑星の温度が変化しない状態にあることを放射平衡状態であるといい、 その時の温度を放射平衡温度といいます。
地球の放射平衡温度は255K(-18℃)です。

実測値(地球の平均温度)である288K(15℃)と大きな差がありますが、 これは地球大気の温室効果の分が入っていないからです。

放射冷却

物体が、電磁波を放射することにより熱を失うこと。
大気分子や地表面からは赤外線を中心とした放射(地球放射)があり、 日射のない夜間等はこれによって大きく熱を失います。
また、放射冷却によって地表面の温度が下がると、そこに接する大気の温度も下がります。
放射冷却は、晴れた風のない夜程よく起こりやすく、放射や遅霜等の原因にもなります。

《 マ行 》

窓領域

地球放射の内、波長8〜12μmの領域は、地球大気にほとんど吸収されず、 大部分が宇宙空間に放出されます。この領域を窓領域(ウィンドウ)と言います。
気象衛星を使ってこの領域の放射の強さを観測することで、放射体(海面、雲頂等)の温度が推定できます。

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降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
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