お天気用語辞典
大気の構造・気候

こちらには、大気の鉛直構造、気候の変動に関する用語をまとめました。

おことわり

このページは、2010年11月25日以降、記事内容の更新がされておりません。
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《 50音順 》重要度 … ■:高■:中、□:低
ア行異常気象インデックスサイクル エルニーニョ現象 オゾン層
オゾンホール- --
カ行外気圏海洋の深層循環 間氷期ケルビン波
圏界面- --
サ行準2年周期振動 成層圏成層圏突然昇温-
タ行対流圏地球温暖化 中間圏テレコネクション
電離層- --
ナ・ハ行熱圏氷河期 ブロッキング現象-
マ・ヤ・ラ・ワ行ラニーニャ現象ロスビー波 --
同義語- -
大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
観測・予報・法律 五十音順全索引
《 ア行 》

異常気象

気象庁では、「過去30年間の気候に対して著しい偏りを示した天候」を異常気象と定義しています。
またWMO(世界気象機関)では、「平均気温や降水量が平年より著しく偏り、その偏差が25年以上に1回しか起こらない程度の大きさの現象」 を異常気象と定義しています。
外因としては、太陽活動、火山噴火、人間活動等が、 内因としては、ブロッキング現象エルニーニョ現象ラニーニャ現象等が挙げられます。

インデックスサイクル

北半球の中緯度偏西風帯の大気の流れが、2つのパターンを4〜6週間の周期で交互に繰り返していること。
通常は、穏やかな蛇行の東西流型と、暖気・寒気の影響による激しい蛇行の南北流型を繰り返しています。
このサイクルが崩れると、ブロッキング現象が発生します。

エルニーニョ現象

数年に一度、赤道太平洋東部のかなり広い範囲(ペルー沖一帯)で、海面水温が上昇する現象。
半年から数年続き、最大2〜5℃前後上昇し、世界各地に異常気象をもたらすことが多い。

日本では、長梅雨冷夏台風の減少暖冬となる傾向があります。

通常、この地域では東風(貿易風)が吹いていて、その影響で暖められた海水は西に移動します。
その為、太平洋西部でまとまった降水があり、東部ではほとんど降水がありません。
ところが貿易風が弱まると、暖められた海水は西に移動せず滞在する為、降水域は東部に偏ります。
この様に、貿易風が弱まると起こる現象をエルニーニョ現象と言います。
これとは逆に、貿易風が強まると起こる現象をラニーニャ現象と言います。
何故、貿易風が変化するのかは、まだよく分かっていません。

太平洋の東西断面図

オゾン層

成層圏の高度25km付近を中心に存在するオゾン分子(O3)の濃度が高い層。
このオゾンが太陽の紫外線の多くを吸収する
為、地上に降り注ぐ紫外線は極微量となっています。
次に、オゾンの生成と分解過程の化学反応式を示します。

O2 + 光(波長0.24μm以下の紫外線) → 2O
2O2 + 2O + 触媒(2Z) → 2O3 + 2Z
合わせて、 3O2 → 2O3
O3 + Z + 光(波長0.32μm以下の紫外線) → ZO + O2
ZO + O → Z + O2
合わせて、 O + O3 → 2O2

この分解で発生する熱により、成層圏内の気温分布は高度とほぼ比例しています。

オゾンホール

1970年代後半より、9月後半から10月にかけて、南極上空でほぼ円形状にオゾン濃度が減り、 オゾン層に穴が空いた様な状態になることが確認されるようになりました。
この状態をオゾンホールといいます。
原因としては、人間が放出したフロンによるオゾン層の破壊が考えられています。

《 カ行 》

外気圏

熱圏の上にある高度500km付近以上の大気の層。
外気圏では分子・原子同士が衝突するチャンスは極めて稀なので、 個々の分子・原子は地上で発射された弾丸のような軌道を描いて運動しています。
中には速度が速くて、地球の引力を振り切って宇宙に脱出するものもあるでしょう。
脱出する為には、地表面から高さ h にあった分子は、少なくとも次式で与えられる 脱出速度 V 以上の速度を持たなければなりません。 (G:万有引力 = 6.668×10-11 m3/kg・s2、m:地球の質量、R:地球の半径)

V = ( 2・G・m / R + h )1/2

一般的な地球からの脱出速度は、約11.2km/s です。

海洋の深層循環

世界の海洋を巡る循環には、深さ数100mまでの表層で起こる海流(高温表層流)と 深さ数100m以上の深海で起こる海流(低温・高塩深層流)の2種類がある。
高温表層流は、大まかに北太平洋からインド洋を経由して北大西洋に向かって流れており、 この循環は、海面上を吹く大気の大循環によって駆動されているので、風成循環と言います。
低温・高塩深層流は、高温表層流がノルウェー・グリーンランド沖に到達した頃に、 海水が蒸発や冷気との接触によって、水温が下がるとともに塩分の濃度も増し、 海水の密度が大きくなって海中深くに沈むことで発生します。 この流れは、大まかに北大西洋から南極海を経由して北大西洋に向かい、そこで上昇し再び表層に戻ります。 この循環は、水温と塩分で決まる密度の差で起こるので、熱塩循環と言います。
通常は1回り約2000年で流れていますが、何らかの理由で大陸上の氷河が融けてできた淡水が北大西洋に流れ込み、 表層海流の塩分濃度が低くなり、深層への沈み込みが弱まることがあります。
その為、熱塩循環が弱くなって北大西洋で暖流が北上しなくなることで、 氷河期になると考えられています。

間氷期

氷河期と氷河期の間にあたる温暖な気候の時期のこと。
地球の気候は、大きく見ると、約10万年の周期で氷河期と間氷期を繰り返しています。
現在は前回の氷河期のピーク(約1万8,000年前)後の間氷期で、氷河は後退を続け、 全体として気候は温和に向かっています。

ケルビン波

赤道波(赤道付近の大気波動の総称)の1種で、ウォレル-コウスキー波とも言う。
熱帯大気の高度18〜25kmの下部成層圏に発生する、波長約4万kmの超長波です。
赤道上で最大の気圧振幅をもつ重力波で、東向きにだけ伝播する特性があります。
同じ赤道波には、ロスビー波があります。
これらは、準2年周期振動エルニーニョ現象ラニーニャ現象の 成因と言われています。

圏界面

大気を構成する対流圏成層圏中間圏熱圏の境目のこと。
対流圏と成層圏の境目を対流圏界面、成層圏と中間圏の境目を成層圏界面、 中間圏と熱圏の境目を中間圏界面と呼んでいます。
それぞれの圏界面の位置は明確ではありませんが、 だいたい温度が極大、極小になっている層の下端が圏界面とされています。

《 サ行 》

準2年周期振動

赤道域上空の下部成層圏において、約2年〜2年半(平均26ヶ月)の周期で 偏西風と偏東風が交互に顕著になる現象こと。
同じ高度で見ると、ただ風向きが変わっているように見えますが、 実は上層で生成された西風(東風)は、時間が経つにつれて下層に降りてゆき、 高度17〜18km(対流圏界面)まで下がると振幅は弱まり、上層で次の東風(西風)が生成されます。
この様な変動は高度40〜50kmまで起こることが観測されていますが、変動の振幅が最大になるのは高度約25kmです。
また、緯度別に見ると、振幅が最大なのは赤道の真上で、 緯度約15°よりも高緯度の地域では、ほとんど認められないくらい弱くなっており、 赤道域だけに特有の変動であると言えます。
この現象が起こる原因については、現在はよく分かっているようです。

成層圏

対流圏の上にある高度11〜55km付近の大気の層。
温度は上に行くほど高くなっている為、空気の対流運動は起こらず、大気は安定しています。
これが成層圏の名の由来ですが、実はいろいろな形態の運動が絶えず起こっています(準2年周期振動成層圏突然昇温)。
環境問題で知られるオゾン層は、この成層圏の高度25km付近を中心に存在しています

成層圏突然昇温

下部成層圏の気温が急激に(1日に約40℃も)上昇する現象のこと。
対流圏から伝わってきたプラネタリー波がもたらす現象で、 春先に起こり、1週間程度続きます。
これは単に局地的な現象ではなく、北半球全域を覆う成層圏循環の大変動です。
通常、冬季の北極付近の上空には寒気を伴った低気圧が、中緯度帯には温暖な高気圧がありますが、 この現象が起こる3月頃には、寒気を伴った低気圧と温暖な高気圧の位置関係が逆転してしまいます。
その為、ある地点において、突然成層圏の温度の急変が観測される訳です。

《 タ行 》

対流圏

大気の一番下にある、地表から高度11km付近の層。
名前の通り、色々な運動によって圏内の空気が上下によくかき混ぜられているのが特徴です。
雲の発生や降雨等の気象現象から、日々の天気の変化をもたらす大気の運動は、ほとんど全て対流圏内で起こっています。
対流圏では、温度は1kmにつき約6.5℃の割合で高度とともに減少します。
また、対流圏の下層(地表から高度1km付近)には、大気境界層(プラネタリー境界層)があります。

地球温暖化

近年の大気中の二酸化炭素等の増加による影響で、温室効果により、 全地球で平均した気温が年々上昇している現象のこと。
これによって、降水量の増加降水分布の変化海面水位の上昇等様々な現象が予想されています。
温暖化の原因となる温室効果ガスとして、二酸化炭素メタンフロン水蒸気等が挙げられます。
また、地球同様に大気を持ち、気温が450℃近くにもなる金星は、二酸化炭素が大気の約96.4%を占めており、 温室効果の究極の状態であるとも言われています。

中間圏

成層圏の上にある高度55〜80km付近の大気の層。
温度は上に行くほど低くなっており、成層圏界面では約0℃ですが、 中間圏界面では-80℃にまで下がります。
対流圏界面より上へは、ほとんど水蒸気は上昇してこないのですが、 その気圧の低さと温度の低さにより、まれに雲が発生することがあります(夜光雲)。
また、中間圏も成層圏と同様に大気の運動(冬半球から夏半球に向かう大規模な循環)があります。

テレコネクション

ある局所的な現象の変化が、数1,000kmも離れた遠隔地の気象変化と影響しあうことを テレコネクション(遠隔結合)と言います。
例として、エルニーニョ現象の影響により、北米大陸で異常な低温や高温に見舞われる等の現象が挙げられます。

電離層

太陽光線に含まれる波長約0.1μm以下の紫外線X線によって、 窒素や酸素の原子・分子が電子とイオンに分かれた電離状態で存在する層のこと。
高度100km以上にあり、電波を反射したり屈折させたりする働きをもちます。
また、オーロラは電離層で起こる現象です。

《 ナ行 》

熱圏

中間圏の上にある高度80〜500km付近の大気の層。
特徴は、名前通り温度が高いことであり、-80℃(中間圏界面の平均)〜800℃(熱圏上部の平均)に達します。
高温の原因は、主に波長が0.1μm以下の紫外線を熱圏にある窒素や酸素が、光電離で吸収するためです。
太陽からの放射エネルギーの内紫外線の占める量は約10万分の1ですが、熱圏にある空気の量も全大気の約10万分の1しかないため、 微量の紫外線でも熱圏の温度は充分高温になります。

《 ハ行 》

氷河期

地球最大の気候変動の内、寒冷な気候の時期のこと。
地球の気候は、大きく見ると約10万年の周期で、寒冷な氷河期と温暖な間氷期を繰り返しています。
更に細かく見ると、約4.1万年と約2.3万年の周期で気候が変動しています。
現在は間氷期にあたり、前回の氷河期のピークは約1万8,000年前でした。
この様な気候変動が起こる原因はまだはっきりとは分かっていませんが、地球軌道要素の変化による説が有力です。

  1. 自転軸の首振り運動によるもの
    各季節における地球と太陽との距離が2.3万年と、1.9万年の周期で変化する。
  2. 地軸の傾斜角によるもの
    現在の傾斜角は23.5°ですが、22.1〜24.5°の間を4.1万年の周期で変化する。
  3. 公転軌道の離心率(軌道の楕円が円からずれている度合い)によるもの
    約10万年と40万年の周期で変動していますが、変化が小さいので気候には影響しない。

他にも、太陽の黒点数(太陽活動の変動)や海洋の深層循環等が原因として挙げられますが、 概ねの気候を決める要素は太陽からの放射であり、この放射量の変化が地球規模の気候変動を引き起こしていると言えます。

ブロッキング現象

インデックスサイクルにおける南北流型がいっそう発達すると、 南下した寒気が中緯度に寒冷低気圧を、北上した暖気が高緯度に温暖高気圧を形成し、 流れをくい止める様に停滞することがあり、これをブロッキング現象といいます。
通常数週間以上持続し、熱波、豪雪、冷夏、長雨等の異常気象をもたらす原因となります。
最近では、2003年春〜夏頃、西ヨーロッパを中心に熱波が襲った記録があり、 これはブロッキング現象により形成された温暖高気圧が、数ヶ月にも亘って停滞していたことが原因だと言われています。

《 ラ行 》

ラニーニャ現象

数年に一度、赤道太平洋東部のかなり広い範囲(ペルー沖一帯)で、海面水温が下降する現象。
エルニーニョ現象とは全く正反対の現象
で、同じく世界各地に異常気象をもたらすことが多い。
日本では、空梅雨、猛暑、台風の増加、厳冬となる傾向があります。
こちらは、エルニーニョ現象に比べれば、影響は少ない様です。
詳しいメカニズムは、エルニーニョ現象をご覧下さい。

ロスビー波

赤道波(赤道付近の大気波動の総称)の1種で、ロスビー重力波とも言う。
赤道から少し離れた緯度(約5°)で振幅は最大で、波長は1万kmの桁をもち、西向きにだけ伝播する特性があります。
同じ赤道波には、ケルビン波があります。
これらは、準2年周期振動エルニーニョ現象ラニーニャ現象の 成因と言われています。

大気の構造・気候 大気の熱力学
降水過程 大気における放射
大気の運動 気象現象
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