気象予報士試験の傾向と対策
実技試験

ようこそいらっしゃいました!
こちらには、実技試験の傾向と対策をまとめました。
気象予報士試験の勉強にお役立て下さい。

おことわり

このページは、2010年11月25日以降、記事内容の更新がされておりません。
現在の情報とは異なる部分が存在する可能性がありますので、大変申し訳御座いませんが、その旨ご理解の上でご覧頂ければ幸いです。

概要

実技試験は、文章や図表で解答する記述式です。
出題範囲は以下の通りです。

実技試験の科目(75分×2)
1. 気象概況及びその変動の把握
衛星画像、高層及び地上の実況天気図と予想天気図等から、 気象概況、今後の推移及び特に注目される現象についての予測上の着眼点等を問う。
2. 局地的な気象の予想
予報業務許可事業者の通常の業務を遂行する為に必要な能力を、 予報業務の計画立案と具体的な局地予報の能力を中心に、具体的な業務形態に即して問う。
3. 台風等緊急時における対応
台風の来襲等、災害の発生が予想される場合に、気象台の発表する警報、ナウキャスティング等、 実況監視データを用いて、適切に対応する為の基礎能力を問う。

75分×2』を見て、まさか…と思った方もいると思いますが、 実は、実技試験は第1部第2部に分かれていて、それぞれ75分間となっています。
と言っても、2つの題材についての問題が出題されるだけで、特に何かが変わる訳ではありません。

学科よりも15分長いですが、それでも時間が足らなくなることが多いです。
かなり難易度は高いと言っていいでしょう。

学科は合格できても、実技がなかなか通らない…という人は、かなり多いのではないでしょうか。

採点に関して

実技試験の採点に関して、財団法人気象業務支援センターから、次の様な一般的な注意が発表されています。

  1. 実技試験の第1部と第2部の試験の採点は別々に行われるが、合格の判定は、 2つの試験の平均値があらかじめ設定された合格点に達しているかどうかで決める方法である。
  2. 設問で求められたことだけを答える。正解の他に不要なことを答えても採点の対象にはならないが、 不要な事が理論的に間違っている場合は、減点の対象になることがある。
  3. 設問で指示された図や資料に基づいて答える。
    指示されていない図を用いたり、逆に指示された図を用いない解答は、減点の対象になることがある。
  4. それぞれの問いには、問題作成者が必ず答えて欲しい用語又は短文、すなわちキーワードがある。
    採点もそのキーワードの有無が対象になる。
    設定したキーワードと別な用語で解答しても同じ概念を示す場合は、正解として扱われる。
    但し、キーワードを羅列しただけでは正解と見なされず、 キーワードが理論的に正しく使われた文章であるかが採点される。
  5. 記述式の字数制限については、ある程度の字数の超過は構わない。
    ただ、設問に対して正しく解答すれば、概ね制限字数に近くなる筈である。
    あまり長すぎるのは余分な事を書いているおそれがあり、極端に短いのは必要な事が書かれていないおそれがある。
    誤字・脱字はそれ自体は採点の対象にならないが、キーワードの誤字は誤解答と見なされることがある。
  6. 図から数値を読み取る問題や天気図上に位置を示す問題では、 読み取り誤差等を考慮して、正解には適切な幅の許容範囲を設けている。

尚、第22回(平成16年度第1回)試験から、実技試験について配点(枝問別)が公表されています。
それによると、第1部、第2部ともに100点満点で、計200満点中約140点以上で合格となります。
出題形式別のだいたいの配点は次の通りです。

  • 穴埋め問題は、1つの語句につき1点。(2点の場合もあり)
  • 図表に書き込む問題は、線1本引く毎に2〜3点
  • 選択問題と語句記述問題は2〜3点
  • 25字以下の文章記述問題3点
  • 25〜50字程度までの文章記述問題は3〜5点
  • 50字以上の文章記述問題は5〜7点

30字以上の長い文章記述問題は出題数が少なく、難易度も高くなっています。

一方、3点以下の問題は大勢を占めており、もしこれらだけでも確実に解答できれば、 十分合格ラインを超えることができます。

但し、長い文章記述問題を捨てるのはあまりにも危険です。
部分点が期待できるので、これもしっかり解答しておくべきでしょう。

出題傾向

実技試験では、学科試験で出題される知識を、各種天気図衛星雲画像エマグラム時系列図等の図表上で問う形式で出題されています。

この為、学科試験に必要な知識をしっかり理解していれば、大概は解答できるものとなっています。

但し、実技試験は学科試験と異なり、理解した知識を自ら文章で解答しなければならない上、 幅広い分野に関連した問題が出題されるので、知識があやふやだと正解することができません。

実技試験に用いられる題材は、気圧配置型で分けることができます。

日本海低気圧型(春・秋) 出題頻度:★★★★★
日本海を温帯低気圧が東進するケース。
日本付近では最も典型的なパターンで、十中八九出題されると言ってよさそうだ。

南岸低気圧型(春・秋) 出題頻度:★★★★☆
日本付近及びその南岸を寒冷渦(寒冷低気圧)が通過するケース。
短時間に激しい気象現象をもたらす例として、よく出題されているようだ。

梅雨前線型(初夏) 出題頻度:★★★☆☆
日本付近に梅雨前線が停滞するケース。
大きな災害をもたらす例として、時々出題されているようだ。

北東気流型(初夏) 出題頻度:★★☆☆☆
オホーツク海高気圧から東北地方に北東の冷たい風が入るケース。
題材に乏しいせいか、あまり出題されないようだ。

南高北低型(夏) 出題頻度:★☆☆☆☆
南に太平洋高気圧、北に低気圧群があるケース。
題材としてメソスケールの現象があるが、あまり出題されないようだ。

台風型(夏・秋) 出題頻度:★★★☆☆
台風が北上するケース。
台風を完全に理解していれば、出題されても大丈夫でしょう。

西高東低型(冬) 出題頻度:★★★★☆
西にシベリア高気圧、東にアリューシャン低気圧があるケース。
冬の典型的なパターンで、出題される可能性は高い。

二つ玉低気圧型(冬) 出題頻度:★★★☆☆
日本海と日本の南岸を2つの温帯低気圧が東進するケース。
温帯低気圧の特殊なパターンだが、けっこう出題されることがあるようだ。

これらの気圧配置型の中の現象としては、温帯低気圧は勿論、これに伴う寒冷前線、温暖前線、閉塞前線や、 台風、寒冷渦、雲クラスター、メソ低気圧、収束雲、局地前線、積乱雲等が問題の対象となっています。

対策

実技試験で大事なことは、様々なスケールの気象現象の構造を発生・発達・消滅の過程を通して理解することです。
実技試験では、多くの資料(図表)が配布されますので、まずこれらを基に、気象現象の時間変化、位置変化を把握します。

気象現象は3次元の構造を持っているので、これら各層の天気図を立体的に理解することが必要です。
構造を立体的に理解するには、天気図を重ね合わせてみることが大切です。

この作業の為、実技試験ではトレーシングペーパー(半透明の紙。これに書き込むと下の紙と重ねて見ることができる)が配布されます。
これを有効に活用すれば、気象現象の時間変化、位置変化をみるのに便利なので、日頃から使い慣れておきましょう。

また、天気図や衛星雲画像を読み取る技術として、天気記号の見方前線の決め方エマグラムの書き方大気安定指数の計算法等の習熟も必要です。

次に、よく出題される図表について説明します。

天気図

時間変化では、実況天気図12時間予想図24時間予想図36時間予想図48時間予想図があります。

地上天気図

テレビや新聞でよく見かける天気図の原図です。
気圧配置の概要の把握に用います。

見なれないものがあるとすれば、速度を表す KT と、[W] 等の海上警報でしょうか。
KTはノットという速度の単位です。船舶の速度もこの単位を用いています。
1 (m/s) ≒ 1.944 (KT) です。例えば、風速 10KT は風速約 5m となります。

海上警報には、海上風警報 [W]、海上濃霧警報 FOG [W]、海上強風警報 [GW]、海上暴風警報 [SW]、海上台風警報 [TW] があります。
その付近の海域の風や霧の状態を示しています。
NHKの気象情報では、この海上警報も発表しています。

地上気圧・降水量・風予想図

予想図のフォーマットです。予想気圧配置に、予想降水量、予想風向・強さが描かれています。
高・低気圧の盛衰、移動、降水量の確認に用います。

この図は実況天気図と違い、誤差が存在する為、おおまかに捉えた方がいいでしょう。
又、この図には前線が描かれていませんので、他の図を利用して前線の位置を解析しましょう。

850hPa 風・相当温位予想図

予想図のフォーマットです。予想等相当温位線に予想風向・強さが描かれています。
主に前線の解析に用います。

前線の解析には、いくつかの図が必要ですが、まずこの図でその目安を付けます。
等相当温位線が混んでいる所からその南端付近が前線にあたります。
前線の解析は、図中に書き込む問題で出題されたこともあります。

又、高相当温位域は、暖かく湿った空気の流入を意味しており、大雨の恐れがあります。
一般的に、夏季340K以上の地域は要警戒域です。

850hPa 気温・風, 700hPa 上昇流解析図

大気中・下層の天気図です。500hPa 高度・渦度解析図とセットになっています。
特に上昇流に注目しましょう。

まず、上昇流域と暖気移流域と正渦度域、下降流域と寒気移流域と負渦度域がどう対応しているかを確認します。
上昇流は複雑に分布していて区別しにくいので、最初に500hPaのトラフ、正渦度域と地上の低気圧、前線を関連付けてから、 対応する上昇流分布に注目するといいでしょう。

  • 低気圧の前面で暖気上昇、後面で寒気下降している場合、低気圧は発達。
  • 上昇流が帯状に連なっている場合、前線がある可能性大。
  • 上昇流があると気圧が低下、下降流があると気圧が上昇する。
  • 上昇・下降流の値が大きいと、現象は活発。

又、前線の解析にも使えます。
等温線が混んでいる所や風が収束している所を見て前線の位置が、 更に上昇流域や渦度0線と合わせて前線の活動状態が把握できます。

500hPa 気温, 700hPa 湿数予想図

予想図のフォーマットです。予想等温線に予想湿数の等値線が描かれています。
対流圏中層の大気の気温と湿数に注目しましょう。

一般には、先の850hPaの気温と500hPaの気温を比べることで、大気の安定度を見積もります。
又、平年と比べて大気の安定度を見積もる方法もあります。

冬季は、寒気の強さによって降雪の強さを知ることができます。
-36℃以下の地域では、大雪の恐れがあり注意が必要です。

湿数(気温−露点温度)が3℃以下の領域(湿域)には、縦細実線が引いてあります。
ここは水蒸気移流域で、雲の出現、降雨が予想されます。

500hPa 高度・渦度解析図

約5500m上空付近(対流圏中層)の天気図です。850hPa 気温・風, 700hPa 上昇流解析図とセットになっています。
500hPaのトラフ、リッジと渦度に注目しましょう。

等高度線も等圧線と同じ方法で、トラフとリッジを見つけることができます。
これを基に、地上の高・低気圧の状態が確認できます。

例えば、地上低気圧に対応するトラフや大きな正渦度があり、 それが風上側(西側)に傾いている場合は、この低気圧は活発で以後更に発達すると分かります。
図中に書き込む問題で出題されたこともあるので、できるようにしておきましょう。

渦度は、正渦度が低気圧性、負渦度が高気圧性のもので、縦線域は正渦度域を示しています。
この縦線域を囲む外枠は渦度0線で、これを基にジェット気流前線の解析ができます。

各hPa 高層天気図

実況図のフォーマットです。850hPa, 700hPa, 500hPa, 300hPa があり、 高度、温度、湿数(850hPa, 700hPaのみ)、風向・強さが示されています。
850hPa では前線の解析、700hPa では湿域の把握、500hPa では対流圏中層における大気の特徴の把握、 300hPa では対流圏上層における大気の流れの把握に用います。

前線は、等温線が混んでいる所や風が収束している所で、おおよその位置を知ることができます。
湿域は、中・下層雲の広がりとほぼ一致しています。
又、700hPa では、トラフ、リッジと気温のズレを見ることで、低気圧の盛衰が分かります。
500hPa では、トラフ、リッジの傾き、等温線との関係をチェックします。 冬季の場合は、寒気の強さや強風軸に注目しましょう。
300hPa では、主にジェット気流の解析をします。

他にも、冬季における圏界面や上層寒冷低気圧の存在をチェックすることができます。

気象衛星雲画像

実際の大気の流れや雲の状態が分かる為、気象予報では重要な資料の1つです。

可視画像(VIS)

見た目そのままの画像です。
太陽光の反射の強弱をモノクロで示しています。

一般的に、雲が上層にあるほど、又、厚みがあるほど白く映されます。
要するに、雲が気象衛星に近いほど、雲の密度が高いほど白く映されます。

雲の特徴が鮮明に見えますが、判別できない雲(積乱雲と濃密巻雲等)もあり、 夜間は画像が得られないのが欠点です。

赤外画像(IR)

テレビや新聞でよく見かける衛星雲画像です。
地球から放射される赤外線の強弱をモノクロで示しています。

温度が低いほど白く映されるので、雲頂高度の高い雲ほど白く映されることになります。
又、同じ高度の雲でも、厚みがあるほど白く映されます。

終日画像を得ることができますが、判別できない雲(層雲と薄い上層雲等)もあり、 可視画像より雲の形が不鮮明に映るのが欠点です。

水蒸気画像(WV)

中層以上の水蒸気の振る舞いを表した画像です。
雲がないときでも、中層以上の大気の状態を見ることができます。

水蒸気量をモノクロで示していて、水蒸気が多いほど白く映されます。
地上の高・低気圧の状態やジェット気流の解析に用います。

雲解析情報図

可視、赤外、水蒸気画像から総合的に解析された図で、これら個々の画像からは得られない情報が表示されています。
雲分布と大気の流れの関係をつかむのに用います。

表示記号については図に示されていますが、その用語の意味について以下に記します。

上層雲域雲頂高度が約400hPa以上で、上層だけの雲で構成されている。
中層雲域雲頂高度が約400〜600で、中層だけの雲で構成されている。
曇天域雲頂高度が約600hPa以上で、多層の雲で構成されている。
積雲域雲頂高度が約600〜900hPaで、積雲で構成されている。
霧域雲頂高度が約900hPa以下で、霧あるいは層雲で構成されている。
Cb域雲頂高度が約400hPa以上で、積乱雲で構成されている。
Cg域雲頂高度が約600hPa以上で、雄大積雲で構成されている。
輝度温度(WV,TBB)等値線上・中層に水蒸気の多い部分が低温、少ない部分が高温で表される。
高温域は下降流場となることが多く、またこれが下層の暖湿流域を覆うと、対流不安定になる。
暗域特に乾燥の度合いの大きい輝度温度(-20℃以上)の領域。
トランスバースライン上層の流れに対して直角に並んでいる、高気圧性曲率をもった巻雲の雲列。
強風軸に沿って現れ、乱気流を伴うことが多い。
シーラスストリーク高気圧性曲率をもった巻雲の筋。トラフやリッジの位置が推定できる。
また、曲率が増すことで、トラフの発達を知ることができる。
上層トラフ300hPaのトラフと一致していることが多い。上層の状態をチェックできる。
強風軸ジェット気流軸に相当する。
対流雲列中・下層の場の特徴が推定できる。
寒冷前線、暖気・寒気移流域内にできる雲列、テイパリングクラウドに伴う雲列等。
下層渦αスケール地上低気圧等に見られる低気圧性擾乱の下層雲渦中心。
下層渦βスケール水平スケール200km以下の下層雲渦中心。
上層渦上層の寒冷低気圧等に見られる上層雲渦中心。
波状雲この領域では、乱気流の起こる可能性が高い。
台風及びTD中心TDは熱帯低気圧の意。
雲頂高度対流雲の発達程度やジェット気流の高度の推定に利用する。
上層風ベクトル上層ジェット気流の変動の監視に用いられる。
下層風ベクトル下層の暖湿流の移流の監視に用いられる。
情報記述表ある雲パターンの変化傾向や特徴等を記述している。
雲域の広がり(H)と雲頂の変化(A)を +, -, 0 で示す。

エマグラム

エマグラムとは、ある地点の上空を熱力学的に見た状態図のことです。
主にある地点の鉛直方向の大気安定度をみる為に用いられます。

横軸には気温が、縦軸には高度の代わりに気圧の自然対数がとってあります。
そして、左下がりのほぼ直線の実線乾燥断熱線群で、 これよりやや傾きの大きい一点鎖線湿潤断熱線群で、 更に傾きの大きい点線等飽和混合比線群です。

乾燥断熱線群には温位(θ)が、湿潤断熱線群には湿球温位(θwが10K毎に、 等飽和混合比線群が g/kg 単位で混合比の値が記されています。

このエマグラムを用いて、いろいろな熱力学の量を計算することができます。
エマグラムから、その地点の上空の状態を理解できるようにしておきましょう。

時系列図

3時間毎や6時間毎の天気図、解析図を並べたものです。
他の図表とは違い、だいたいはメソスケール(一部地域、例えば関東地方とか)で描かれています。

天気、雨量、湿数予想等、多種多様な時系列図があります。
数値予報で得られたデータを、その時間変化が分かり易いように、ビジュアル的に見やすくまとめたものと言えるでしょう。

その他の図表

上記の他にも、次の様な図表が出題されます。

ガイダンス表

数値予報の計算結果の値を、規則正しく並んだ格子点上の値にして示したものです。(数値予報GPV)
特に試験に出題されると思われるものとして、3時間発雷確率(POT)3時間降水量(MR3)24時間降水量(MR24)があります。

3時間発雷確率(POT)は、対象地域の最大値(アルファベット)と平均値(%)が示されています。【例: C(09)… 最大10〜19%、平均9%】
3時間降水量(MR3)24時間降水量(MR24)は、対象地域の最大値と面積平均雨量(mm)が示されています。【例: 13:4 … 最大13mm、平均4mm】

これから、どの地方に最大何mmの雨量が、24時間で最大何mmの積算雨量が予想されるか、雷に注意が必要か等を見るのに利用します。

高層断面図

東経130度、140度上、北緯25〜50度にかけての上空の断面図です。
大気の鉛直構造の理解に用います。

等風速線(太い破線)等温位線(太い実線)等温線(細い実線)が描かれています。
また、圏界面高度最大風速高度も示されています。
主にジェット気流や、その下に見られる前線帯、圏界面の把握に用います。

ただ、この図の解析はかなり荒いものになっている為、 詳細な解析をするには、他の図を参考にしながら再解析する必要があります。

レーダーエコー合成図

全国20ヶ所の気象レーダーサイトのエコーデータを合成した図です。
日本全体の降水量の確認や降水をもたらしている要因の把握に用います。

ただ、気を付けておきたいのは、毎時1mm以下の弱い雨をほとんど解析していないことと、 このエコー域(降水域)は高度の要素も持っていることです。
つまり、上空エコーの場合もあって、地上で降水があるとは限らないということです。

又、エコーが陸上の場合は、できるだけアメダス等の実測値をチェックした方がいいでしょう。

波浪図

外洋波浪図沿岸波浪図の2種類があります。
北太平洋海域、日本近海及び沿岸海域の波浪の実況、予想を見る為に用います。

外洋波浪図では、高・低気圧、等波高線、卓越波向(白抜き矢印)、海氷域(×印内)、船舶による観測値が記されています。

等波高線は、風浪(風による波)とうねり(残波、他域から伝わった波)の合成波高(風浪とうねりの有義波高を合成したもの)の分布を1m毎に実線で示しています。
有義波高とは、観測された波の波高の高い方から順に1/3個を選び、これらの波高及び周期を平均したものです。
船舶による観測値は、風向・風速と、風浪とうねりの方向、周期、波高が示されています。

沿岸波浪図では、等波高線、風向・風速と卓越波向・周期(白抜き矢印・数字)、海氷域(×印内)、が記されています。

悪天24時間予想図

(国際)航空用に作成された上空の悪天予想図です。
飛行機の航行に必要な情報が記してあります。

台風(弱い熱帯低気圧を含む)は付加情報欄に、地上前線は移動方向、速度が記されています。
並み以上の乱気流域は、太い破線で囲われています。
その中に印と予想高度が書いてあります。

まとまった積乱雲は、波線で示しています。
その中に積乱雲の状態と高度が書いてあります。

ISOL(isolated)孤立した積乱雲域
OCNL(occasional)散在する積乱雲域
FRQ(frequent)隙間の無い積乱雲域
EMBD(embedded)上層雲に埋没した積乱雲域

風矢印はジェット軸を示しています。数字は100feet単位です。
四角の中の数字は、圏界面高度を示しています。
2層予想される場合は、主な方を H(高い方)か L(低い方)で示してあります。


実技試験は、文章を書く問題ばかりではありません。
穴埋め問題や図表に書き込む問題もあります。

穴埋め問題

第1部と第2部共に必ず出題されます。
数としては、それぞれ約15〜20問(配点:15〜20点)といったところです。

だいたいが、天気の概況や解説文の穴埋め問題です。
地上天気図等を見て、低気圧の位置や、ある地点の天気等を読み取り解答する、といった感じです。
天気図から読み取る力と学科試験の知識(用語)が必要な問題と言えるでしょう。

配点は1問(1つの語句)につき1点で、実技試験の中でも難易度は一番低く、そう時間もかからないので、 決して取りこぼすことの無い様、手早く確実に正解しておく必要があります。

図表に書き込む問題

必ず1問は出題されます。(配点:5〜20点)
低気圧の東進過程や前線の解析の問題が多く出題されているようです。

ちなみに平成15年度第1回試験では、寒冷前線とその付近の等圧線の解析が出題されました。
私は、この問題には結構時間がかかってしまいました。

この問題は、天気図から読み取る力が必要です。
図表に書き込む時に、試行錯誤して何かと時間がかかりますが、そんな必要はありません。

採点に関して6.にもあるように、 読み取り誤差等を考慮して、正解には適切な幅の許容範囲を設けている為、 あなたが読み取った通りに、解答を書き込めばいいのです。

そんなに難易度は高くないので、できるだけ手早く確実に正解しておきましょう。

文章記述問題

実技試験の半分以上がこの問題です。(配点:60〜80点)
実技試験の中でも難易度は高く、重要な問題と思われます。
ゆっくり…とはできませんが、残りの時間を大いに使って解答しましょう。

採点に関して4.5.にもあるように、 この問題では、キーワードの有無が重要です。
よって、まずはキーワードを挙げましょう。

文章記述問題には字数制限がありますが、だいたい20文字キーワード1つと考えて下さい。
文章を作るにあたって、キーワードを羅列しただけではもちろんダメで、キーワードを理論的に正しく使う必要があります。

字数制限に関しては、同じ位がベストですが、だいたい8〜12割までならいいでしょう。
多過ぎたり少な過ぎたりすると、余計な事を書いていたり、必要な事が書かれていなかったりしている可能性があるので、見直しが必要です。

とにかく、「図表から読み取る力」と「学科試験の知識」がモノをいうので、あなたの力が諸に出てしまいます。
この文章記述問題が、難無くこなせられる様になれば、実技試験の合格が見えてくると言っても過言ではありません。

参考書

実技試験は、学科試験の知識を基に実際の天気図等の上で確実に理解し、自ら文章で解答しなければなりません。

よって、学科試験の知識に加えて必要な知識は、天気図等の図表の読み取り方です。
後は、『実技』であるので、天気図に慣れ、問題を数多くこなすことが必要です。

気象予報のための天気図のみかた
下山 紀夫 著
(株)東京堂出版
本体:5,200円+税
様々な天気図が掲載されており、その読み取り方、着眼点等が詳しく書かれています。
気象学の基礎も記されており、学科試験の復習もできます。
天気図に慣れ、読み取る力は、この本でほぼ身に付けることができるでしょう。
改訂版 最新天気予報の技術
天気予報技術研究会 編
(株)東京堂出版
本体:2,800円+税
学科一般、専門から、実技試験まで全てをコンスタントに網羅している本です。
実技試験においては、5つの例題が掲載されています。
解説にキーワードが書かれている為、キーワードを使った文章の作成例が確認できます。
気象予報士試験精選問題集
気象予報士試験研究会 編著
(株)成山堂書店
本体:2,800円+税
タイトルそのままの過去問厳選集。
学科・実技共に収録問題数は多く、問題数をこなすにはもってこいな本です。
ただ、解答についての説明は少なめなので、試験直前の仕上げに用いるのがいいでしょう。

最低限、天気図の読み取り方が書かれた本と、問題集があればいいでしょう。
と言うか、実技試験向けの参考書は少ないのが現状です。

正直、独学ではちょっとキツイかも知れません。
お金はかかりますが、通信講座やスクールを利用すると楽に身に付けることができます。

Amazon 気象予報士関連の本を探す

予報業務に関する一般知識 学科一般試験のススメ
予報業務に関する専門知識 学科専門試験のススメ
実技試験 実技試験のススメ
このページのトップへ