みなみの一からボウリングレッスン
3-1 ボールを転がすリリース技術
マイボウラー中級編 【適正アベレージ:151〜180】
当レッスンでとても重要なページの1つです。
このページは何人足りともスキップするべからず!
リフト&ターンとローダウン
リリースは、投げるボールの個性を決める重要な動作であると言えます。
そのリリースは、大きく分けて「リフト&ターン」と「ローダウン」の2種類が知られています。
「リフト&ターン」は、振り子スイングから最終ステップでスライドし、 体の真横(フォーワードスイング最下点)を過ぎる瞬間に親指を抜き、 手首をターンさせながら、残った中指と薬指で引っ掻き上げることで、 ボールにフック回転を与えて放す投げ方です。
良く分かりませんね?
要は「手首をターンしながら、中指と薬指で引っ掻き上げて投げる」というイメージです。
20世紀は、このリリース方法を教えるのが定番で、「オールドスタイル」とも呼ばれます。
一方の「ローダウン」は、カップリスト(手首と肘を内側へ曲げる)でスイングし、 最終ステップで止まると同時に、体の真横(フォーワードスイング最下点)から手の平でボールを前へ押し出し、 ブロークンリスト(肘を伸ばして手首を外側へ曲げる)にして親指を抜き、 残った中指と薬指にボールが乗っかることでボールにフック回転を与えて放す投げ方です。
良く分かりませんね?
要は、「意識的に手首(および体全体)のしなりを使い、回転と球速を加えて投げる」というイメージです。
本場アメリカではこの様な投げ方が常識となっており、PBA選手のあのあり得ないフック(回転)と球速の正体がこれなのです。
21世紀になって、ようやく日本でも教えられるようになってきました。
ちなみに、「ローダウン」は和製英語なので、日本でしか通じません…。
現在は「ローダウン」の方が推奨されますが、「リフト&ターン」が悪い訳ではありません。
ただ、「ローダウン」を習得した方がメリットが多いのは事実です。
「ローダウン」のメリット
- 下りてきたボールをそのまま転がすので、球速を損なうことなく、回転数を上げることができる。
- 回転軸がほとんど傾かないので、ローリングがボールの最大円周に極めて近くなり、グリップ力の強い球質になる。
- 手首や下半身を使って、球速と回転数を上げることができる。
「ローダウン」のデメリット
- 習得するのが難しく、身体への負担が大きい。
- ある程度のパワーとスタミナが必要。
- 下半身が上手く使えないと、良い効果が得られない。
最終的に自分のフォームを固める上で、「ローダウン」と「リフト&ターン」両方の要素を取り入れて、 それが一番いい結果を生んだのなら、それが一番いいフォームと言えるでしょう。
本格的な「ローダウン」を実践するには、それなりのパワーとスタミナが必要なので、 一般的な日本人なら、双方の要素を取り入れた「ハイブリッドスタイル」にするのが適していると思います。
例えば、「肘は曲げず振り子スイングのままで、リリースの感覚だけローダウンを採用する。」といった感じです。
巷のレッスンでも、だいたいこの投げ方をベースに教えられているのではないでしょうか。
当サイトでも、スイングは振り子でやって参りましたので、そこはそのままにして、 リリースだけ「ローダウン」を採用していきたいと思います。
これからはまず、振り子スイングからのスリングショット(簡単なローダウンリリースの1種)の習得を目指して頂きます。
それをマスターできた段階で、この基本を土台とした個人個人のフォームを作り上げていって頂ければといいと思います。
親指が上手く抜けるようにする
下半身と上半身の動きのタイミングを合わせることが、ボールにパワーを与える一番の要素です。
そのボールのパワーは、「ボールの重さ」と「球速」と「回転」で決まります。
ボールの重さ
ボールの重さは、簡単に変えられるものではありませんので、ボールの購入時は慎重に決める必要があります。
初めてなら、ハウスボールの+1〜2ポンドでもいいでしょう。
でも、理想としては重い方がいいので、本格的に始めるなら以下を参考にして下さい。
重い様に思いますが、適正なメジャー(採寸)でドリルされたボールで練習すれば、投げられるようになるはずです。
10代男子 | 12〜15ポンド | 成人男子 | 14〜16ポンド | シニア男子 | 13〜15ポンド |
---|---|---|---|---|---|
10代女子 | 11〜13ポンド | 成人女子 | 13〜15ポンド | シニア女子 | 12〜14ポンド |
球速(ボールスピード)
球速については、振り子スイングのフォワードスイングで得られるボールの落下スピードを、
そのまま利用するものとします。
無理に力で球速を上げようとすると、「回転」やコントロールが悪くなりますので、とことん脱力を心掛けて下さい。
回転
回転は、サムリリース(親指の抜け)が最も重要な要素となります。
まず、あなたは真っ直ぐ投げる際、親指が引っ掛かった(抜けるのにはっきりとした抵抗があった)ことはないでしょうか?
もしあれば、ドリラーに見てもらって、その原因を解決して下さい。
それはサイズの問題であったり、ただボールの持ち方が悪かっただけかもしれません。
親指は曲げずにリラックスして伸ばした状態で、親指の第1関節から第2関節の間の腹の部分で支えるようにしましょう。
指先で握る癖のある方は、親指の背中側にテーピングテープを貼って矯正してみて下さい。
その状態でスイングし、引っ掛かってロフトする等、過度の抵抗がなければOKです。
もし、穴が緩くて「ボトン」と落としてしまうなら、インサートテープを貼って、サムホールを徐々に小さくしていきます。
サムホールは円形ですが、実際の親指は楕円形です。
特に指の背側に大きな隙間ができてしまい、これが無駄な「握り」の原因になります。
なので、インサートテープを貼り重ねて、この隙間を埋めてしまいましょう。
逆に貼り過ぎてきつくしない様に。
ぴったりの大きさになるようにし、抜く時に若干抵抗があるくらいがいいでしょう。
フィッティングが良くなれば、ボールを握るという無駄な力を入れずに済むようになるので、 自然とタイミングよくリリースしやすくなり、その精度も上がってくるはずです。
また、手首も脱力できることで、より回転を付けられるようになります。
インサートテープを貼ることには、もう一つ目的があります。
サムは、体調によるむくみ等で、微妙に太さが変化していきます。
その時々のサムの状態に合わせて、貼るテープの枚数を変えて大きさを調整します。
こうしてサム調整を行っていくことで、常時最良のサムリリースが持続できるようになる訳です。
とにかく、自然にサムが最良のタイミングで抜けるように調整できるようになりましょう。 そうすれば、余計な力を使うことなく、回転力を上げることができます。
まずは、サムが抜けた感覚が分かるようになって下さい。
この時、ターンしたり余計なことはせず、スイング軌道そのままに真っ直ぐボールを放すようにして下さい。
サムが抜けると、自然にボールがフィンガー(中指と薬指)に乗るので、それを感じて下さい。
リリースタイミングや手の平が向く方向など様々な要因で、ボールの転がり方が変わってくるはずです。
その都度ボールの動きをよく観察し、どのタイミングがベストで、ズレるとどうなるのかを知りましょう。
ボールがこぼれる様に投げる
上手く親指が抜ける様になれば、これを「回転」に結び付けていくことができます。
まず、ここまでもそうだったと思いますが、完全にマスターするまで、リストの形は「ストレート」で統一して下さい。
「ストレート」とは、アドレス時に、手首を自然に真っ直ぐにした形で、手の平がボールの真下にある状態のことを言います。
このリストの形は、アドレスからフォロースルーまで維持するようにして下さい。
途中動くことがあっても、少なくともアドレス時とリリース時は同じ形である必要があります。
またリリースにおいて、ターンは一切しないで下さい。
するのは上級者になってから、必要であれば習得して下さい。
昔はターンをしない「ナチュラルフック」は弱いとされてきましたが、現在はボールの性能が進化したこと等もあり、 コントロール性の高い「ナチュラルフック」が主流になっています。
回転をかける概念ですが、リフトアップでは、上へ引っ掻き上げて回転を掛けますが、 ローダウンでは、下へこぼし落とすことで回転を掛けます。
ここでは、ローダウンリリースを推奨し、そのやり方を説明していきます。
まず、今までリフト&ターンだった方は、フィンガーで意識的に引っ掻き上げる意識を完全に捨てて下さい。
ローダウンを練習していても、いつのまにか気付かぬ内にリフト&ターンに戻っていることもあるので、 これから先も十分注意して下さい。
しっかりタイミングよく親指が抜けると、ボールが自然と指先からこぼれ落ちていき、 自然とフィンガーに引っ掛かって、ボールに回転が付きます。
最初は、ボールを落とす感覚だけでいいでしょう。
親指の抜けるタイミングによって、早く落としてしまったり、引っ掛かってロフトしてしまったりするので、 サムホールの調整をしながら、ベストなリリースタイミングを探して下さい。
この「こぼし」ができるようになれば、回転数が増し、オイルが切れてからのボールの動き、 ピンアクションが向上するのが分かるはずです。
それが「生きたボール」です。
今までのがいかに弱かったかが分かると思います。
「生きたボール」がどんなものなのかを、しっかり観察して覚えておきましょう。
更に体重移動、脱力がしっかりできて、リリースタイミングがバッチリ合い、 しっかりとフィンガーに乗せて投げられるようになれば、ボールの破壊力は格段に上がることでしょう。
とにかくポイントは、
- フォワードスイングで、完全に脱力すること。
- ボールは、上に引っ掛け上げずに、下へこぼし落とすこと。
その際、手首が折れてブロークンリストになっても構わない。むしろその方が好ましい。
慣れるまでは、下半身を使えていなくても構いません。
まずはローダウンリリースの感覚をしっかり掴んでから、徐々に連動させるようにしていきましょう。
体重移動を意識する
どんなスポーツにも言えることですが、下半身をしっかり使えているかどうかは、 プレーの質に大きく影響します。
ボウリングについても同じことが言えます。
手投げでは、ボールが生きてきません。
下半身からのパワーをボールに伝えることで、初めて「生きた」「強い」ボールが投げられるようになるのです。
と言う訳で、まずはしっかり下半身を鍛えましょう。
私が色々試した中でおすすめなトレーニングをいくつかご紹介します。
詳しくは、S-1 かんたんトレーニング法 のページをご覧下さい。
さて、基礎体力を付けたとして、実践に移ります。
まず、下半身を使うために、アドレスの際に腰(重心)を落として構えて下さい。
膝の角度を120〜140度位にするのがベストです。
今まで棒立ちだった方は、強制的に意識させる為に、更に深めに落としましょう。
そして、投球動作に入り、ボールを投げ終わるまで、その腰の高さを維持して下さい。
リリースの際にヘッドアップして、上半身が起きたり、腰が浮いたりしてしまわないように。
終始、足の裏全体で(かかとから爪先へ)しっかりアプローチを捉え、重心の位置を意識ながらステップして下さい。
蹴り足(4歩助走なら3歩目)に体重が乗っているのが意識できたり、投球後にバランスを崩すことなくフォロースルーの姿勢が保てるようになれば、 ひとまず合格と言えるでしょう。
ステップのリズムですが、最初は特に意識する必要はありません。
単に、スイングに合わせて淡々と歩を進めればいいのです。
練習する内に無意識に学習し、自然と合わせられるようになります。
慣れたら、今度は歩幅を調整してみましょう。
最初は歩幅を小さく、蹴り足からスライドにかけて歩幅を大きくしてみて下さい。
徐々に助走を加速させるイメージです。
ステップのリズムは変えず、歩幅だけを変えます。
無理に「溜め」を作ったりしてステップのリズムを変えると、リリースタイミングにズレが生じてしまいますので止めましょう。
リリースのタイミングですが、スライドが止まる(姿勢が安定する)前に親指が抜けるのがベストです。
そうすれば、フィンガー(中指と薬指)にボールが乗っている時(リリース直前)に身体が止まり、 重心が完全に軸足(スライド足)に移って、そこから指先を経由して、ボールへとパワーが伝えられます。
ただし、その時の姿勢が悪ければ上手くいきません。
スライドが止まってから投げると、体の回転を使ってしまいがちですが、 肩は一切動かさずに、むしろその壁を意識して投げるといいでしょう。
以上の様に、しっかり下半身を意識して使って投げられるようになったら、 今度は、蹴り足からやや重心を下げるイメージで投げてみましょう。
そうすることで、蹴り脚により体重が乗って、力強いボールが打ち出せるようになります。
そして、そのままスライド脚の太腿で、しっかりその勢いを受け止めてあげましょう。
下半身が安定、かつ強固になれば、上半身がより脱力できるようになり、 その相乗効果で、力強いボールが安定して打てるようになるはずです。
ステップ(体重移動)調整
【A1】⇒ やや前傾姿勢のまま、みぞおちを前に出す意識でステップする。
【A2】⇒ やや前傾姿勢のまま、みぞおちの背中側を前に出す意識でステップする。
【B1】⇒ 前傾はせず、そのまま骨盤を前に出す意識でステップする。
【B2】⇒ 前傾はせず、首の付け根を前に出す意識でステップする。
※ あらかじめ4スタンス理論についてをご覧下さい。
肩の動きを制御する
中級者までに多い悪い癖と言えば、「親指を握ってしまう」「手首をこねくり回してしまう」が挙げられますが、 もう一つ大事なのが「両肩のラインが動いてしまう」ことです。
例え上手く脱力ができて、ボールの落下運動を利用して、以前よりボールの威力が増したとしても、 肩が動いてしまっては、その効果も半減しますし、何よりコントロールが乱れてしまいます。
と言いましたが、実は「オープンバック」といって、肩を意図的に開いてバックスイングのトップの位置を上げるテクニックがあります。
ローダウン投法におけるスピード調整法なのですが、この肩の動きは「後ろから前へ」スイング軌道と同じ方向への直線的な動きなので、コントロールが乱れることはありません。
ダメなのは、肩が首の付け根を中心軸とした円弧の動きをしてしまう「ドアスイング」です。
要は、肩の動きのあるなしに関わらず、自分自身で制御できているかどうかが問題なのですが、 ドアスイングは、後々弊害が出てくると思いますので、しっかり矯正をしておくべきでしょう。
とりあえずは、意識して肩のラインが動かないように投げる練習をして下さい。
意図的に動かすのは、それができてからでも遅くはありません。
以下に、肩の動きを制御するポイントをご紹介します。
右肩と腰骨右側を意識する
スイング&ステップ中に、右肩と右腰(お尻の右側)の位置が動かないように意識します。
更にプッシュアウェイで、ボールが身体の背中側に入り込まない様に注意しながら、イメージしたラインにキッチリ乗せるようにします。
後は、ダウンスイングからしっかり脱力し、最後まで余計な動きは付けずに真っ直ぐ投げられれば、ドアスイングを防げるようになるでしょう。
左腕を意識して使う
プロのフォームを見ると、スイング中、左腕がピンと真っ直ぐ伸びていると思います。
これには、身体の左右バランスを保つのと同時に、脇を締め、肩をロックする役割があります。
左腕を真横にピンと真っ直ぐ伸ばし、手の平を後ろに向けた場合、そこから後ろへは抵抗があって腕が動かなくなると思います。
この感覚を意識することで、肩のラインが動きにくくなります。
更に、左手の人差し指を意識してピンと伸ばすことで、両脇が閉まりやすくなります。
【練習】サムレス投法
昨今、軽いハウスボールを使って、親指を抜いたまま抱えるように投げて、 物凄い回転を掛けている若者をよく見るようになりましたが、これは正にローダウンの理に適っています。
この投げ方は、親指を穴に入れずに投げることから、サムレス投法と呼ばれています。
これは、ローダウンリリースの感覚を掴むには最適な練習方法です。
まず、普段使っているボールより3ポンド前後軽い(もっと軽くてもいい)ハウスボールを選んで下さい。
親指を穴に入れないので、手首も肘も内側に曲げて、ボールを抱え込むようにしないと持てないはずです。 (ボールを手の平全体で包み込み、人差し指と小指でボールを支える様に意識すると持ちやすくなります。)
その格好で軽くスイングし、最下点に来たら、曲げている手首や肘を伸ばし振りほどくイメージで、ボールをこぼす様に放して下さい。
当然、下半身の動きが重要です。
下半身で上手くタメが作ることができれば、腕の脱力、ボールの押し出しができ、高回転でスピードが乗ったボールが投げられるはずです。
なかなか上手くいかないという方は、重さを軽くするか、リリースまで両手で持って投げてみて下さい。
落っことしたり引っ掛けたりせず、ある程度コントロールできた上で、早い回転が出るようになったら合格です。
その時の感覚をしっかり覚えた上で、マイボールに戻して、親指もしっかり入れて投げてみましょう。
親指が上手く抜けなければ、サムホールの調整をして下さい。
決して小手先で調節しないように。
投げたボールが生きるか死ぬかは、全て親指が上手く抜けるかどうかに懸かっています。
これをマスターできたら、如何にサムホールの調整が大事かが、分かるようになると思います。
ちなみにですが、普通の人がこの投げ方で投げても、大抵スコアは良くなりません。
その原因として、ボールが軽い為に、結果的に破壊力が落ちているということと、必要以上に曲がっていること、 曲がることでコントロールが難しくなることが挙げられます。
もちろん、普通に投げる時と同じ重さのボールが投げられる等の理由から、 ボウラー顔負けのスコアを叩き出している人も中にはおりますが…。